戦後生まれの元教員らで構成した語り部グループ「戦争の歴史を知って平和を自分事として捉えてもらいたい」
「南の風」代表 常盤泰代さん
戦後79年が過ぎ、戦争経験者の高齢化などにより、戦争体験の継承が課題となっている。昨年、発足した語り部活動を行うグループ「南の風」は戦後生まれの元教員らで構成する。常盤泰代代表に活動内容や意義などを聞いた。(山畑壮起) 【動画】米軍機に付けられた「ガンカメラ」などの映像を解析…豊の国宇佐市塾の織田祐輔さんに思いを聞いた
――なぜ語り部活動に関心を持ったのか。 「10年ほど前に赴任した宮崎市立宮崎東小の管内には、戦時中に沖縄県から疎開した人が暮らす波島地区があった。疎開者のルーツや背景を調べるうちに、差別に苦しんだ人がいることを知った。そうした歴史を伝えなければならないと思い始めた」
――グループを作った経緯は。 「波島地区のことなどを伝える活動をしていた2022年、宮崎県遺族連合会から『県内の戦争の語り部が少なくなっている。次世代の語り部として活動してくれないか』と言われた。戦争について研究などを行ってきた元教員ら約10人で23年に『南の風』を結成。これまで、学校や公民館など63か所で語り部活動を行った」
――活動をする際、大事にしていることは。 「それぞれが住む地域でも戦争があったことを知ってもらうため、出向く地域に合わせた話をするよう心がけている。例えば延岡市で語るときは延岡大空襲の話を織り交ぜる。また、現在、台湾有事が起きた場合、沖縄県の離島からの避難住民を宮崎県内で受け入れる計画があることも紹介し、平和がいつ崩れるかわからないと感じてもらうようにしている」
――語り部以外にどのような活動をしているか。 「沖縄県から宮崎に疎開してきた女の子が空襲で犠牲になる話を描いた絵本『似顔絵大作戦』を作った。空襲を体験した方々の証言などを基に、登場人物の服装や髪形などを事実に忠実であることを重視した。人々の生活が空襲で一瞬で壊れたことを感じてほしいとの思いを込めた。絵本の原画展などを計画している」
――今後の展望を教えてほしい。 「戦争の歴史を知って平和を自分事として捉えてもらい、戦争を起こさないために平和について考える時間をつくることが大事だと思う。今後、戦争体験者と学生らが集まる機会を設け、対話ができるような取り組みを行っていきたいと考えている」
◆ときわ・やすよ=宮崎県都城市出身。大阪府の大学を卒業後、出版社に就職。その後、小学校の教諭となり30年間勤務した。語り部活動のほか、退職後の2019年4月に宮崎市阿波岐原町前浜にギャラリーカフェ「風の庵」を開店。沖縄そばやポークたまごのおにぎりなど沖縄料理が人気という。58歳。