『イップス』©︎フジテレビ

　ドラマ『イップス』（フジテレビ系）第3話の犯人役は、塚本高史。「広い家に一人で過ごしてると、一人で暮らしてる感覚になりますね」といったアホ……ではなく、お花畑なコメントばかりを繰り返すことから、“フラワー健一郎”と呼ばれている都議会議員・尾花健一郎（塚本高史）が、秘書の田所万作（平田満）を刺殺する密室トリック。第1話、第2話は脚本をオークラ、演出を筧昌也が務めていたが、第3話では脚本を森ハヤシ、演出を並木道子が担当。テイストが大きく変わっていたりはしないが、先述した発言や二世議員といった立場から、どことなく某政治家を思い出させる風刺の効いた物語でもある。 【写真】『木更津キャッツアイ』などで知名度を上げた塚本高史の現在の姿 　黒羽ミコ（篠原涼子）と森野徹（バカリズム）のバディは、いよいよ本格始動。もちろん第2話までもバディとしての掛け合いは絶好調だったが、第3話ではついに捜査一課の刑事たちにミコが顔見知りとなり、「取材」と描かれた腕章をつけてほぼ公認という形で捜査に協力していくこととなる。ドヤ顔、ノリノリなのは第2話に引き続き、機動捜査隊の酒井純平（味方良介）や警官の水田勇人（足立英）ともすっかり仲良くなり、滲み出るチャーミングな振る舞いはナチュラルな篠原涼子といった印象だ。森野の刑事としてのバディである樋口一之（矢本悠馬）とは今回が初対面。ミコはなんだかんだで樋口とも上手く付き合っていくことになるのであろう。 　田所の腹部にナイフが刺されていた今回の事件は第1話のサウナ、第2話のカラオケと比べると血生臭く、邸宅というシチュエーションも相まって、森野的に言うと、“殺人事件み”が強い。「わめいたり、騒いだりしないので」と約束した直後、田所の遺体を見てしっかりわめき散らかすミコに、続けて「事件み強い」と遺体を直視できないイップスが発動しかけている森野という側面では、やはり2人は絶不調バディである。 　密室トリックについては、田所が尾花家を守るため、健一郎を逮捕させてはいけないと死の間際に田所自らが仕込んだ手段だった。装飾用とはいえ、ナイフでお腹を刺された田所が健一郎に遺書など多くの指示をし、最後の力を振り絞って自身の腹部を6回刺したというのは少々現実的ではないように思えるが、そもそも第1話でのサウナも大量の純水や後頭部の火傷痕など、少々詰めの甘いと思える部分が多く見受けられ、トリックの再現性についてはそこまで重きを置いていないのではないだろうかと第3話にして思えてもくる。 　殺人現場での取材を経たミコだったが、相変わらず小説は1ミリも書けなかった。ミコの電話相手は弟で弁護士の慧（染谷将太）。彼が見つめる先にはSNSの投稿があり、そこには「森野刑事は認めるべきだ。あの事件は冤罪である事を。」とある。ミコのミステリー小説『歪な十字架』を模倣した事件で逮捕された人物は無罪を訴え続けているようなのだ。そのことがトラウマとなり森野は犯人を追い詰めることができない、イップスとなってしまったのだろうか。