ソニー・ホンダ連合がEV開発に生かすプレステの知見「移動に新たな価値をつくる」 出遅れ挽回へトップが語った勝算
ここからソニー・ホンダモビリティの川西社長の話に入ろう。EVのアフィーラの発売を予定するのは2025年とまだ先だ。テスラやBYDに加え、EVへ大きくかじを切るフォルクスワーゲン(VW)など旧来の自動車大手とどう戦っていくのか聞いた。 ―タッグを組んだ経緯は。 ホンダから最初に声かけがあった。(自動車の在り方を)変えていきたいという思いが強かった印象がある。ソニーも新しいチャレンジをしたいとの思いがあった。共有する方向性があった。 ホンダは車両開発や量産への知見、アフタービジネスといった力を持っている。ソニーはソフトウエアやセンシング、ネットワーク、エンターテインメントの技術を持っている。総合力で新しいモビリティー(乗り物)をつくっていくのが協業の狙いだ。 ―音楽や映画を車内で提供するのか。 そういったコンテンツの提供はある程度満たさないといけないと思っている。ただ、それだけだと家の中でスマートフォンでできる。移動の中に新たな価値を考えていくことが重要だ。(ガラケーと呼ばれた)旧来型の携帯電話からスマートフォンに移行した際には大きな変化があった。それはネットワークと半導体、ソフトの進化だ。自動車はこの部分が圧倒的に足りていない。足りない部分を満たすものを搭載するのが自分たちの狙いだ。人の思考を先回りする、おもてなしができるようなモビリティーに進化していくべきだ。
▽価格競争で勝負しない、実現したい世界観を提示する ―家庭用ゲーム機プレイステーションの知見も生かされるのか。 ハードとしてのモビリティーは必要だが、最終的にはサービスを考えることになる。プラットフォームづくりや運営の知見は、プレイステーションの経験がかなり役に立つ。プレステにはレースゲームが存在しており、親和性がある。車とゲームで業種は異なるが、新たな交わりができたらいいと思う。 ―アフィーラは第5世代(5G)移動通信システムでクラウドと接続する計画で、カメラやセンサーなどが45個搭載されている。その理由は。 車内だけでなくクラウド上にあるソフトも含めてトータルで考えなければならず、そこを常に意識しながら開発している。ネットワークを駆使した世界をつくることになる。カメラやセンサーは車外では安全安心のために使うことになる。車内はドライバーのモニタリング機能もあるが、楽しさにも活用できる。人などの動きを検知するセンシング機能を使って楽しさを表現したいと思っている。拡張現実(AR)はその手段の一つだ。 ―販売価格や自動運転への対応は。
性能などのレベルを落として価格で勝負していく方向に最初はかじを切りたくない。技術的に十分なものにしていきたい。自分たちの実現したい世界観を提示することが大事だ。自動運転の時代は一足飛びに来るとは思わないが、自動運転が導入される時点で考えましょうといった戦略では手遅れだ。先端技術に今から関わっていくことが重要だ。