にじさんじの“品行方正なギャル幼女”? 多面的な魅力を持つレイン・パターソンのこれまでとこれから
現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一つであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。 【画像】4人が答えた「3文字のお寿司のネタといえば?」というクイズ メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ数年ほどはエンターテインメントのフィールドでアーティストとして日の目を見る者も増加してきた。 育成プロジェクトである「バーチャル・タレント・アカデミー(VTA)」からも新規ライバーがデビューし始めており、現在約150名のメンバーが所属・活動しているにじさんじ。その層の厚さで今後も大きな影響を与え始めている。 ここ数週ではローレン・イロアス、レオス・ヴィンセント、オリバー・エバンス、レイン・パターソンからなる「エデン組」についてフォーカスし、オリバー/レオスの2人について記事を書かせてもらった。今回はエデン組の紅一点、レイン・パターソンについて追いかけてみよう。 ■エデン組の紅一点はギャップが魅力 クールキャラかと思いきや“ギャルで幼女”? レイン・パターソンは、2021年7月19日にSNSに初投稿し、22日午後に初配信を迎えた。 ポニーテールで結んだ赤毛のロングヘアー、キリっとした目つきで左目側を隠した前髪、黒いショートパンツにロングブーツ、肩・お腹・太ももを露出したビジュアルは凛々しさとセクシーさを醸し出している。最近では、にじさんじ3Dビジュアルの共通衣装であるステージ衣装を着飾り、スラッとしたスタイルの良さを全面に押し出した踊ってみた・ダンス動画も投稿している。 ちなみに、彼女はディーラー 兼 メイド衣装、アイドル衣装、ニットワンピース衣装、和装振り袖衣装、チャイナドレス衣装など、これまで様々な服装・ビジュアルを見せているが、赤毛のロングヘアーは短くしたことがなく、彼女のトレードマークといっていい。 初投稿で彼女のビジュアルをみたにじさんじファンからは、「クールな女性か?」「カッコいいキャラかも?」という声が上がっていた。実際にその後の初配信や活動を見れば分かるように、高めの声色、甘い滑舌、テンション高めなリアクションとノリが相まって、いわゆる“ギャルっぽい女性”に見られることが多い。 対して、配信中に焦りすぎたり緊張感あるシーンを迎えたときには、アワアワとあわてて少女のようなあどけない言動をみせることから“幼女”と形容されることもあり、ファンからは「ギャルと幼女どちらの要素も兼ね備えている」と評されることが多い。 先に初配信を終えていたローレン・イロアスが彼女を「パタさん」「パタ姐(パタ姉)」と呼んだこともあり、現在でも彼女の愛称として親しまれているが、のちに彼女が自身を「パタち」と呼ぶようになってからは、こちらもファンに知られている。 「パタ姐(パタ姉)」「パタち」というギャップある愛称が2つともファンに親しまれているあたりに、「ギャルと幼女、どちらも兼ね備えている」という評価も説得力が増してみえてくる。 他方で、同業者であるVTuberやストリーマーからは、誠実さ・礼儀を重んじるタイプと評されることが多く、連絡が非常に手早く丁寧で、先輩たちと食事に行った際は出された料理を率先して取り分けるといったエピソードがしばしば明かされるほど。 配信上でも「コメントやスパチャにしっかりと目を通して答えることが多い」「初対面のひとには必ず『さん』『くん』『ちゃん』など敬称を付けて呼び、関係性が見えてくるまではいたずらにふざけない」「後輩相手でも受け答えは下手(したて)に出ることが多い」「3Dビジュアルでの立ち振舞いや座り方がキレイ」など、礼節を重んじる真面目な性格を感じられる言動が節々に感じられる。 同期であるレオスとオリバーも言動・礼節がしっかりとしているタイプであるため、発足当初から社会人的なマナーやモラルに欠けたエピソードに事欠かなかったにじさんじの先輩らと比較すると、好対照に感じるファンは多いかもしれない。 そういった品行方正なイメージをもちつつ、ユーモアやフレンドリーさも持ち合わせた話し上手・聞き上手な一面も備えているレインは、にじさんじ内の先輩・後輩に限らず、にじさんじ外のさまざまな活動者から慕われるタレントでもある。ゆえにコラボの頻度も高く、さまざまな配信で彼女の姿を見ることができる。 続いては、そんな彼女のパーソナリティにも触れつつ、その活動の遍歴を振り返ってみよう。 ■感激家・ギャンブル好き・美容へのこだわり……レイン・パターソンの多面性 軽いノリで次々にトークを展開していくことで、「ギャルっぽい」と言われがちなレインは、もちろん自身の配信でも悲喜こもごもな姿を見せてくれる。特に、感受性の高さからくる涙もろさは人一倍で、ゲームなどのストーリー・登場人物に感情移入しやすく、ド定番な流れ・不意をついた流れなどどのようなストーリー展開であっても涙を誘われてしまうようだ。 『ドキドキ文芸部プラス!』『Detroit:Become Human』などストーリー性に重きをおくゲームを配信でプレイした際は、物語が急展開を迎えると「え、どういうこと? きみたち?(リスナーの呼び名)」と戸惑いながらストーリーをすすめ、ときに怖がりつつも徐々にキャラクターに心を寄せ、気づけば鼻をすすりながらプレイしていた。 くわえてゲームだけでなく、にじさんじ内外のイベント・企画に参加した際などにも、予期せぬ展開に驚いて泣いてしまうことがしばしばある。 2022年に開催されたにじさんじのポーカー大会『NIJISANJI NEW YEAR CUP OF POKER 2022』では決勝まで進出したのだが、優勝まであと一歩というところで成瀬鳴に敗退してしまい、賞金100万円をのがしてしまった。 「エデン組のオリジナル楽曲を作りたい」というレインの話を聞いていた優勝者の成瀬鳴が、「レインに優勝賞金の一部を渡したい」と語ったところ、その計らいに大号泣したこともあった。 『にじさんじGTA』に参加した際も、警察に就いて日々プレイしていたなかで様々なトラブルと出くわした結果、期間の後半では動揺するとすぐに涙腺が緩んでしまい、涙声混じりでプレイする場面が出てきてしまったのだ。 サーバーからログアウトした後は、ある程度の時間を取ってリスナーたちと会話し、気持ちの高ぶりや涙が収まるまでその日起こったことを整理しようとする姿がが印象的で、気を落ち着かせようとしていたはずが、その瞬間を思い出して逆に涙がこぼれそうになったりと、彼女のなかでの揺らぎが配信を通して映し出されていた。 悔し涙に嬉し涙、3年近い活動の中で彼女はさまざまな涙をその想いと共に流しているが、それらには彼女の感受性の高さ・情緒豊かさが強く現れており、まさに感激家といってもいい。 にじさんじに入るまではゲームにあまり触れてこなかったとのことで、アクションゲームなどはうまくプレイできないシーンもたまに見せるのだが、彼女には得意ゲームがいくつかあり、そのなかの一つとして麻雀があげられる。 本人曰く、「2歳のころから祖父に教わり麻雀を打っている」「3人麻雀を主に打っていた」という。彼女のデビュー当初、この噂を聞いたジョー・力一が「これが上がれたら楽しい! となる役は?」と聞いたところ、「役をいうと打ち筋がバレてしまう。いちども上がってないですが緑一色が好きです」という“ガチ”な回答をする一幕もあったほど。 この麻雀好きが縁となり、にじさんじ内でも指折りの麻雀打ちとして知られるルイス・キャミー、天宮こころの2人と仲良くなり、「ロリコロール」というユニットを組んで活動もしている。ちなみにユニット名の由来はレイン、ルイス、天宮の3人が揃って“幼女っぽい”言動をすることが多いところにちなんで名付けられている。 またトランプを使ったゲームも得意であり、先述したポーカーは言わずもがなだが、彼女の人気配信企画「下剋上大富豪」でプレイする大富豪もその一つ。 企画内容としては、レイン本人とゲスト含め4人で大富豪をプレイするのだが、プレイしている間に順位がつけば、4位がもっとも後輩、1位にもっとも先輩と上下関係がつき、その都度会話口調を敬語にして話したり、上位者が下位者に急な無理難題をふっかけて煽ったりと、普段の配信では見られない振る舞いやコントを楽しむ内容となっている。 これまでに7回にわたって催されているが、初期はフレンが一番後輩であったためほとんどが先輩だったところ、最近では後輩たちが呼ばれるようになり、ゲストの顔ぶれも変わってきている。どの配信も1時間から1時間半ほどにまとまっているのだが、ゲームの勝ち負けよりも会話内での煽り合いやコントにどうしてもパワーを使ってしまうためだろう。逆に言えば、アーカイブでも視聴しやすい配信として追いかけやすい配信となっている。 麻雀やトランプゲームといったいわゆるマインドゲームが上手なレインだが、もう一つ得意……もとい好きなのが競艇・パチンコ・パチスロといったギャンブル・賭け事である。 にじさんじに入る以前は週3でパチンコ・パチスロ店に通い、ネットで気軽に楽しめることを知って競艇にハマるなど、さまざまなタイミングでギャンブルを楽しむようになったレインは、競艇に関してはデビュー当初から好きと公言しており、2022年2月からはボートレースびわこの公式YouTubeチャンネルにおいて「エデン組のにげさしまくり」をスタートするにまで至った。もちろん番組の中心にはレインが据えられ、さまざまな企画を配信している。 先輩であるイブラヒム、伏見ガクと並ぶパチンコ・パチスロ好きとしても知られており、配信上でパチンコ・パチスロを打つこともあれば、パチンコつながりで仲良くなった面々もいるほど。彼女の配信活動のなかでもギャンブル・賭け事は少なくないウェイトを占めているのだ。 そんなレイン・パターソンだが、活動する前から自身の健康・美容に力を注ぎ、くわえて体力作りにも励んでいるようだ。2023年末には活動を通じて初めてのリアルライブとなったにじさんじ 5th Anniversary LIVE 『SYMPHONIA』に出演、キレのあるダンスで観客を魅了した。くわえて、にじさんじ内でメンバーを募って結成された「にじさんじダンス部」「チームIDD(アイドルダンス同好会)」の2グループのどちらにも参加しており、配信を通じて語ってきた高い運動能力を発揮している。 おしゃべり好きな彼女は雑談配信も多く、そのなかではスキンケアや化粧などのコスメ・美容の話題にふれることが多い。タレントがとても多いにじさんじというグループの特徴をフルに活かし、同僚らに聞き込みをし、ライバーたちが愛用している化粧品を紹介する企画をおこなったり、自身が購入したコスメの使用感レビューを配信したりと、美容に紐づけた活動を「レインと美活」と称して継続的にファンに届けている。 配信のなかで「スキンケアに正解はない」と断りつつ、肌質を十字グラフにして説明したり、「あなたのスキンケア工程を教えて下さい」とドストレートな質問を各タレントに投げかけ、その解答を取りまとめて配信で紹介するなど、増加傾向にあるにじさんじの女性ファンにも注目される配信となっている。 じつは『にじさんじフェス2023』内の会場展示においても、「レインの美活 出張版」として星川サラや加賀美ハヤトらの愛用コスメ・スキンケアアイテムを展示しており、筆者が取材に訪れた際には「御本人が使用している」ということも相まって長蛇の列となっていた。 ■配信、企画動画に外ロケ 活躍の場を拡げるレイン・パターソン そんな彼女が目下注力しているのは、ショート動画である。 2022年6月に初のショート動画を投稿したあと、2023年3月からは本格的に投稿をするようになり、ここまで話題に上げた美容やダンスをネタにした動画、配信中の切り抜きなども投稿するようになり、2023年だけでゆうに100本以上ものショート動画を投稿したのだ。 2024年に入ると、美容ネタやダンスネタにしたショート動画にフォーカスしたことで投稿頻度は落ち着いたのだが、それでも彼女のルックスやビジュアルを押し出す方向性として最適な入門動画として広まっていくだろう。 2024年7月からスタートした公式番組『LOCK ON FLEEK』では同期・ローレンとともにMCをつとめているが、第2回として話題にあがったのが「ショート動画を学ぶ」というもの。ゲストとして星川サラ、えるの2人を呼び、彼女らが講師役として番組は進行していたが、じつはレイン自身が講師役になっていてもおかしくないレベルなのだ。 今回は、レイン・パターソンの活動・趣味趣向・パーソナリティを中心に、駆け足ながらピックアップさせてもらった。3年の活動でさまざまな活動を行なっており、非常に高濃度・高密度な歩みをしてきたことがこの記事からも伝わるはずだ。 配信・企画動画・収録ロケなど、スタジオにも外にも出向き、ゲストはもちろんのことMC役まで。レイン・パターソンは多方面で活躍しつつ、礼儀正しく品行方正、先輩・後輩ともノリ良くコミュニケーションが取れ、喜怒哀楽・感情豊かな姿で多くのファンを魅了してきた。 3周年の記念ソロ配信のなかでは、自身の活動を振り返りつつ「パタち(私)にとって楽しいと思えるものを届けてきて、それをきみたちに喜んでもらえていることがとてもうれしい!」と感謝の気持ちを口にしている。 最後に、彼女といえば思いもよらぬポンコツぶりや、ちょっとした常識外れな言動でイジられることが多く、彼女を面白く・楽しく見れるスパイスになっている。 3文字のお寿司ネタといわれれば、多くの人は「マグロ」を思いつくだろう。 彼女は「うなぎ」を思いついた。 定番ゲーム「一致するまで終われまテン」のなかで、さっさとゲームを終わらせよう!という空気の中でとっさに答えを出した流れであり、「(たまたま)最初に思いついたのが『うなぎ』だった」と彼女は弁明している。とはいえ、エデン組全員並びに視聴者すらもクリアを確信していたムードから一転、戸惑いと呆れ、なにより「本気なのか?」といったリアクションへと変わり、後にもイジられる爆笑シーンとなった。 このシーンを見れば分かるように、彼女もまた少しだけ世間離れした、独特のセンスを持つにじさんじの一員なのだと気付かされる。筆者としては、今後も溢れんばかりのバイタリティと体力、そしてその麗しいビジュアルで多くの人を魅了しつつ、“にじさんじな一面”が明らかにされる瞬間を心待ちにしていようとおもう。
草野虹