2023年メディア・アンビシャス大賞は「アイヌ民族レポート」「部落差別題材の番組」
初の海外メディア受賞も
メディア・アンビシャスは09年、北大の山口二郎教授(現在は法政大学教授)らが「メディアをよくするには批判だけでなく、いい記事、放送に感謝し、称えよう」と始めた市民運動だ。新聞協会賞やJCJ(日本ジャーナリスト会議)賞と違い、会社員、弁護士など市民が主体で、発想も運営も自由だ。今回初めて海外メディアを特別賞に選んだ「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」(ユーチューブ「BBCワールドニュース」など)は日本メディアの「知っていても取り上げない」沈黙を浮き彫りにした点に称賛が集まった。BBCのモビーン・アザー記者とメグミ・インマン監督は「日本で受け入れられるか不安だったが、大きな反響をいただいた。この問題での議論を深めた人たち全員が、正義がもたらされることへと寄与できますように」とのビデオメッセージを寄せた。 活字部門メディア賞の「自民党派閥パーティ券のスクープによる裏金づくりの一連の報道」(『しんぶん赤旗』日曜版。担当は山田健介デスクと笹川神由記者)は22年11月6日が初報。本来は「23年」の選考対象外だが、裏金問題は現在も進行中の大事件。スクープの価値はルールをも超えた。 表彰式で札幌テレビ放送出身の水島宏明・上智大学文学部教授が「グルーミングとホモソーシャル」をキーワードに講演。グルーミングとは子どもの従順さにつけ込み特別な絆があると思い込ませつつ性犯罪の準備をする行為を、ホモソーシャルは男同士の体育会系的なれあい行為を指す。BBCは旧ジャニーズ問題の核にグルーミングがあると見るが、水島教授は、日本のメディアにこうした社会学的アプローチは希薄、と指摘。「勉強不足では」と奮起を促した。
徃住嘉文・報道人