フジテレビが「大リーグ中継」理由に取材パス一時“はく奪”…NPBの対応は「報道の自由」の侵害? 弁護士が指摘する問題点とは
“スポンサーへの配慮”説「事実ならかなり不当」
取材パス“はく奪”の理由について、NPB側は「日本シリーズの価値を最大化するため、全てのプロ野球関係者が協力してきたが、(フジテレビがWSダイジェスト放送を行ったことで)協力体制が損なわれ、信頼関係が著しく毀損(きそん)された」といった趣旨の説明をしたと報じられている。 この“理由”について、杉山弁護士は「もし裏番組の放送が理由なのであれば、それは表現の自由的な観点だけでなく、独占禁止法的な観点からも問題になると考えられます」と指摘する。 「各スポーツ興行がどのように放映権を売り、利益をあげるかは基本的に自由であり、むしろ、同じ時間に同種の放映が提供され、視聴者(消費者)が自由に番組を選択できる環境の方が、自由競争市場的であると評価できます。 にもかかわらず、取材パスの“はく奪”という、本来の興行の価値とは異なる『ペナルティ』を科して、ライバルの興行が利益を得にくくするのであれば、それは市場において望ましくない行為になります。 NPBの規約がどうなっているかは別として、規範的視点で『正当か不当か、どっち寄りの印象を受けるか』と言われれば、私は『不当』寄りではないかと感じました」 また、この騒動をめぐっては、日本シリーズのスポンサーが三井住友銀行である一方、WSで注目を集めた大谷選手には三菱UFJ銀行がスポンサーとしてついていることから、「NPBがスポンサーへ配慮した結果、フジテレビへの処分に至ったのでは」との臆測が一部のメディアやSNS上で取りざたされている。 こうした臆測についても、杉山弁護士は「仮に、もしそのような話が事実であるのであれば、かなり不当で自由市場的でない行為だと感じます」とコメントした。
一部ではフジに批判の声も…「視聴者が選べば良いだけ」
一方で、今回の騒動では、フジテレビ側への批判の声も少なくない。 フジテレビは今年5月に大谷選手の新居を過剰に報道するなど、プライベートに踏み込んだ内容の報道が原因で炎上。WSの中継でも、優勝を決めた大谷選手への直接インタビューが「拒否されたのではないか」との疑惑が報じられていた。 こうしたフジテレビによる度重なるトラブルもあいまってか、今回のダイジェスト放送についても、「わざわざ再放送をぶつけなくても」「節操がない」といった意見がSNS上などで上がっていたのだ。 しかし、杉山弁護士はあくまでも冷静に、以下のように述べる。 「日本シリーズを見るのも、WSの録画を見るのも、視聴者が選べば良いだけです。 そもそも、この世界に2つの放送事業者しかいないわけでもないですから、『好きに放送し、好きに見る』が原則であるべきですね」
弁護士JP編集部