【秋の夜長に見たい映画】『荒野の用心棒』『アンタッチャブル』などの音楽を制作した偉才のドキュメンタリー
そろそろ今年も終わりに向かい、やり残したことや来年の目標を考え始める時期に差し掛かった。人生に迷いはつきものだが、偉業を成し遂げた芸術家たちの葛藤や、何を人生の指針にして創作活動をしていたのかということから学べることもあるはず。アーティストの人生からインスピレーションをもらえる作品をピックアップ 【写真】アートな映画3選
映画を最も深く理解していた偉才──『モリコーネ 映画が恋した音楽家』
数々の映画音楽を手掛け、2020年、91歳でこの世を去ったエンニオ・モリコーネ。『荒野の用心棒』、『アンタッチャブル』などを始め、500作品以上の映画やTVドラマの音楽を制作し、アカデミー賞®には6度ノミネートされ受賞もしている。そんな伝説の音楽家が自身の半生を振り返る様子を『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレが監督したドキュメンタリー作品。
かつて映画音楽は地位が低く、アカデミックな音楽を学んだモリコーネは劣等感に加え、罪悪感まで感じていたと涙ながらに語る。名声を得ながらもそのジレンマと葛藤し、音楽家としての誇りを手にするにまでの課程が、懐かしい名画や、監督らの言葉とともに紐解かれていく。モリコーネによって語られる制作の裏話が小気味よく、またその記憶力の良さにも驚く。自分の作った作品ゆえ当然なのかもしれないが、語りながら口ずさむメロディーは、まるで楽器のように曲ごとに音色を変え、音程も速度もオリジナル音源と寸分違わない。 また豪華な出演者も本作の見どころだ。モリコーネとともに仕事をした70人以上の著名人へのインタビューを敢行し、盟友であるセルジオ・レオーネをはじめ、クリント・イーストウッド、オリバー・ストーン、クエンティン・タランティーノといった名監督からブルース・スプリングスティーン、ハンス・ジマーなど映画や音楽に関わる多くの著名人が登場し華を添える。まるで彼らからのラブレターのように愛あふれる言葉に心温まり、アカデミー賞®受賞シーンや、ワールドコンサートのシーンでは感極まるだろう。本作はとにかく映画が見たくなる、映画音楽が聞きたくなるそんな作品だ。
『モリコーネ 映画が恋した音楽家』 Blu-ray:¥5,390、DVD:¥4,290 発売・販売元:ギャガ Amason Prime Videoなどでレンタル配信中 BY KANA ENDO