「京都大学の入試問題」もラクラク理解できる!幅広く応用が利く「樹形図」の考え方
食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。 【漫画】月500時間、時給340円…雇われ店長が明かす「過酷すぎるコンビニ勤務」 長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。 『大人のための算数力講義』連載第3回 『大学生でも意外と間違える四則演算…あなたは「40-16÷4÷2」を正確に計算できますか? 』より続く
樹形図で素朴かつ正確に数える
およそ樹形図の発想は、素朴にかつ正確に数えることに有効であり、広く応用が利く。 たとえば、性別と血液型(A、B、AB、O)について全部で何通りの型があるかを考えると、樹形図を描いて次の 2×4=8(通り) の型があることが分かる。 そこで、もしここに9人いるならば、そのうちの少なくともある二人は性別と血液型が一致することが分かる。
「数え方」の分類
同様に考えると、現在生きている、ある二人の日本人は、誕生日の月と日、生まれた時刻の時と分、血液型、住所地の都道府県のすべてが一致することが分かる。 実際、樹形図を想定して考えると、それらに関するすべての場合の数は となる。そして、この数は現在の日本の人口約1億2400万人より小さいので、結論が導かれる。 実は、場合の数を数えることは、簡単そうで意外と難しく奥が深いものである。 「離散数学」という専門の数学があるのは、それゆえだといえるだろう。大きく分けると数える方法には以下の三つがある。 「帰納的に考えること」 「2通りに数えること」 「対称性を用いること」 算数として取り上げることが可能な話題を紹介しよう。
京都大学の入試問題
例題:京都大学2007年入試問題の変形 1歩で1段または2段のいずれかで階段を昇るとき、1歩で2段昇ることは連続しないものとする。6段の階段を昇る昇り方は何通りあるかを求めよう。 下からN段までの階段の昇り方をN↑で表すことにすると、 1↑=1(通り) 2↑=2(通り) 3↑=3(通り) までは、やさしく分かる。次に4↑,5↑,6↑を求めてみよう。 4↑=4段目に昇る最後の1歩は1段の場合の数 +4段目に昇る最後の1歩は2段の場合の数 =3↑+(2↑のうち、2段目に昇る最後の1歩が1段の場合の数) =3↑+1↑ =3+1=4(通り) 5↑=5段目に昇る最後の1歩は1段の場合の数 +5段目に昇る最後の1歩は2段の場合の数 =4↑+(3↑のうち、3段目に昇る最後の1歩が 1段の場合の数) =4↑+2↑ =4+2=6(通り) 6↑=6段目に昇る最後の1歩は1段の場合の数 +6段目に昇る最後の1歩は2段の場合の数 =5↑+(4↑のうち、4段目に昇る最後の1歩が1段の場合の数) =5↑+3↑ =6+3=9(通り) なお、6段でなく15段の階段を昇る場合の数を求める問題が京大の入試問題である。この答えは277通りであり、ヒントとしてNが4以上のとき、一般に N↑=(N-1)↑+(N-3)↑ が成り立つ。 『じゃんけんはどの手を出すと勝ちやすい? 10000以上のデータから明らかになった驚くべき「法則」』へ続く
芳沢 光雄(数学・数学教育)