ザックジャパン 最後の強化試合でのテーマは先制点
アメリカフロリダ州クリアウォーターでのキャンプも、6月7日(日本時間)にタンパで行なわれるザンビア戦で打ち上げとなる。これまでに誤算だったのは、怪我人が出ていることだ。再手術した膝の炎症を起こした長谷部は、コスタリカ戦に続き、ザンビア戦も大事を取ることが濃厚で、酒井高も依然として別メニューが続く。ザンビア戦前日には長友も右ふくらはぎの張りを訴えて別メニューになった。また、本田が未だ本調子を取り戻していないなど、懸念材料は少なくない。 もっとも、チーム全体を見れば、初戦に向けてのピーキングは今のところ、おおむね順調だと言っていい。徹底的にフィジカルを追い込んだ鹿児島・指宿合宿を経て、5月27日のキプロス戦ではチーム全体から体の重さ、キレのなさが感じられたが、6月3日のコスタリカ戦では動きの質、連動性も高まり、コンディションが明らかに上がってきた。 ザンビア戦の前日会見ではザッケローニ監督も「プラン通りに進んでいる」と手応えを示した。昨年11月、敵地でベルギーから逆転勝利を収めてから4連勝中ということもあり、チーム内は今、ポジティブな雰囲気に包まれている。だが、その状況に危機感を抱く選手もいる。例えば、長友だ。「2010年大会の前はあれだけダメで、一人ひとりがネガティブになっていたけど、初戦で勝って変わっていった。そこがすごく難しいところ。今はいい感じで来ていて、チームとしていい試合ができて、みんなが良い自信を得ているならいいんですけど、ネガティブな自信といいますか、ネガティブな方向に進んでいくと難しいかなと思っています」。 ネガティブな自信について、長友はさらに続けた。「メンタル面で隙が出てくると、プレーにも隙が出てくる。自分たちはやれるんだというポジティブな自信ならいいんですけど、自分たちは強いとか、相手を見下すような、そういう気持ちが出てくると難しい」。4連敗でW杯初戦を迎えた前回大会では、チーム内に絶えず危機感があり、隙が生まれるような余裕はなかった。 だが今回は、順調であるがゆえに危機感が芽生えにくく、満心や過信に陥る可能性があるというわけだ。順調であるがゆえの落とし穴――。そこにチーム作りの難しさがある。ザンビア戦もこれまで同様、あくまでも準備試合の一環だ。選手個々のコンディションを見極め、新たな組み合わせやテストを確認し、チームとしてのパフォーマンスをチェックする場であって、必要以上に結果や内容を問うゲームではない。ただし、「危機感」という点でチームに課したいのは、「先制点を与えない」というミッションである。このチームは、あまりに先制点を与える試合が多いからだ。