【イベントレポート】「こちらあみ子」大沢一菜、撮影最終日にスタッフを整列させ「みんなよくやった!」
映画「こちらあみ子」の特別上映会が本日10月21日に東京・ユーロスペースで行われ、キャストの大沢一菜、監督の森井勇佑が登壇した。 【画像】「こちらあみ子」のオーディション時を振り返る大沢一菜と森井勇佑 今村夏子の小説をもとにした「こちらあみ子」では、主人公あみ子の少し風変わりで純粋な言動が周囲の人々に影響を与えていくさまが描かれた。当時オーディションで抜擢された大沢があみ子に扮し、あみ子の両親役で井浦新、尾野真千子が出演。本イベントは、大沢と森井が2度目のタッグを組んだ「ルート29」が11月8日に公開されることを記念して企画された。 あみ子役のキャスティングオーディションについて、大沢は「緊張してたのは覚えてる」と回想する。森井は「一菜は一番話を聞こうとしていなかったんですよ(笑)。オーディションが始まる前の待合室で、目の前で話し掛けてもずっと別の方向を見ながら返事していて。でもそれがよかった。この作品においては、『よろしくお願いします!』みたいな子役っぽさがないほうがいいと思ってたので」と起用した理由を明かした。 大沢いわく「ほぼ遊んでいた」という撮影現場に関しては、森井が「どれだけめちゃくちゃな状況になっても、(大人には)誰も“ちゃんとしよう”としないでおこうねと話していました。ほかの子役の子も含めて死ぬほど遊んでるんですけど、その中でしか撮れないものがあると思っていたので、誰かがピリッと仕切ったりしないように」とこだわりの現場作りを語る。印象に残っているシーンを問われると、大沢は「尾野さんが泣くところ。すごい大声で泣くからめっちゃびっくりしたけど、込み上げてきてすぐ泣けるのがすごいなと思いました」と述懐した。 「こちらあみ子」の撮影終了後、あまりの寂しさから泣き続けていたという森井。当時のことを聞かれた彼は「エモーショナルなお別れだったんですよ。最終日、長い階段を上がった先にある場所でお別れ会をしていると、一菜が挨拶し始めたんです。当時『東京リベンジャーズ』が好きだったみたいで、総長の集会シーンのように『みんな! 整列だ!』ってスタッフを並ばせて、『〇〇部の〇〇(名前)はよくやった!』みたいなことを1人ひとりに言ってくれて。スタッフみんなが号泣している中、階段を降りながら『じゃあな!』って去って行ったんです」と劇的なエピソードを披露する。当の大沢は「覚えていない」と困惑気味だった。 続いて、話題は森井の監督最新作「ルート29」へ。綾瀬はるかが主演を務めた同作では、他者と必要以上のコミュニケーションを取ることのできない主人公の“トンボ”ことのり子が、風変わりな女の子ハルと旅に出て絆を深め、さまざまな人と出会うさまがつづられる。綾瀬がのり子、大沢がハルに扮した。2度目のタッグとなった大沢について、森井は「『こちらあみ子』のときも感じていたけど、大沢一菜本人にどこかかっこいいところがあるなと思ってて。それをそのまま映画で表現できるような役をやってもらいたいなという思いがあった」と口にした。 もともとファンだったという綾瀬との共演を、大沢は「笑顔で優しい人かな?と思っていたら本当にそのままで。好きになりすぎて、恥ずかしくて話し掛けられなかった」と振り返る。演じるスタンスについては「自分の中では『こちらあみ子』のときと同じ感じだった」と言いつつ、「監督のアドバイスが、『こちらあみ子』のときは『一菜のまま自分らしくいてくれ』だけだったけど、『ルート29』のときは一番大切なシーンで『ひとりぼっちで宇宙にいるような感覚になってくれ』と言われた。最初は何言ってるんだろう?と思ったけど、よく考えたらハルの気持ちを実感できて、そのまま出せばいいのかなと思った」と自身の気付きを伝えた。 最後に大沢は、俳優という仕事について「みんなと撮影現場で会うと学校で嫌なことがあっても忘れられるのが好きだから、これからも続けていきたい」と宣言。森井は、大沢を「子役の域は超えている。半端ない存在だと思います」と評してイベントを締めくくった。 「ルート29」は東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。11月1日には第37回東京国際映画祭のガラ・セレクション部門にて上映される。