ザラッ ツルッ…触って楽しい

点字付き絵本「ぼうけんしよう！」のページに指で触れるスギヤマカナヨさん（東京都内で）

平面から盛り上がった点の並びによって文字や数字を表現する「点字」。視覚障害者が手で触って読み解くためのものだと思っていたが、そうとも限らないという。何を目指しているのか、点字付き絵本を送り出している人たちに聞いてみた。 絵本の表紙で、「ぼくの　なまえは　ユビッキー」と名乗る不思議な生き物が笑っている。その下をオレンジ色の道が横切り、青い足跡が二つ。文字とイラストが印刷された一般的な絵本に見えるが、表面は透明な樹脂でデコボコしている。6月に発売された絵本「ぼうけんしよう！」（偕成社、3080円）は「てんじつきさわるえほん」だ。 デコボコを触って読み取る絵「触図」をたどりながら、分かれ道を選び、曲がりくねった道を進む。作者で絵本作家のスギヤマカナヨさん（57）は「目が見える子も見えない子も、体を動かすことが難しい子も、本の中で冒険できる絵本を作りたかった」と話す。書かれた文字も点字も読めない子のために、朗読が聞けるQRコードもつけた。 誰もが同じように絵本を楽しめる、その先により良い世の中があればいい、とスギヤマさんは願う。「点字の大切さを知った人は点字ブロックの上に自転車を止めないだろうし、視覚障害がある人と交流したくなるかもしれない。絵本がそんな一歩になれば」

これまでに出版された点字付きの絵本

　　　　　　　　　◇ 市販の点字付き絵本が増え始めたのは、出版社や印刷会社などでつくる「点字つき絵本の出版と普及を考える会」が2002年に設立され、技術や情報を共有するようになってから。既に出版された絵本に点字や触図を付けるだけでなく、オリジナル作品も増えつつある。 一方、「公表された著作物は、点字により複製することができる」と著作権法は規定している。同会代表の岩田美津子さん（72）は、約40年にわたり「てんやく絵本」を手作りしてきた。自身も目が不自由な岩田さんらが点字や絵の形に切ったシートを市販絵本に貼り付け、全国の視覚障害者らに貸し出す活動だ。岩田さんには「目が不自由でも読める絵本の選択肢を増やしたい」との思いがある。