『モンスター』“杉浦”ジェシーの熱意が心を動かす 法律ドラマとラップの相性
粒来(古田新太)の動きが隠し味に
誰が声をあげるか。覆面ラッパーI:Zackの正体が泰造の息子の拓未(前原滉)であると知った杉浦(ジェシー)は、拓未に証言してもらうよう直談判した。杉浦のラップが下手すぎたことで、拓未は自分自身を省みざるを得ない。拓未は幼なじみのさくらを巻き込みたくないものの、自ら告発する気になれなかった。拓未が証言したのは結果論に思えるが、杉浦の熱意が拓未の心を動かしたと言える。杉浦自身、一歩踏み出して自分の殻を破った。杉浦は亮子に反対するが、所長の圭子(YOU)の話を聞いてビビッていたのは自分だと気づいたのではないだろうか。 2024年4月期に放送された『JKと六法全書』(テレビ朝日系)第2話で、女子高生弁護士のみやび(幸澤沙良)は、殺人容疑で起訴されたラッパーのMC・RYU(奥野瑛太)に「本当のことを教えて」と方言を交えたラップで伝える。専門用語を駆使する弁護士が、人間同士1対1で向かい合うとき、ラップに心の思いを乗せるという発想は興味深い。 偶然の出会いを装い、とっさにラップを口ずさむなど、粒来の動きが隠し味のように効いていた。さくらに訴えを起こさせ、亮子を介して、サカミクリーンの従業員を守る本来の目的を達成した粒来。反社のフロント企業に残ったのは、このためだったとも思われるが、真意はまだわからない。亮子の前から姿を消したのは、おそらく娘を守るため。ゆくゆくは亮子が自分と同じ法律の道に進むと予想し、関係を絶ったのだろう。あうんの呼吸で紡がれる連携プレーは、この親子に言葉はいらないと感じさせた。
石河コウヘイ