「もう一度この場所に」再戦を誓う“寡黙なストライカー”シュライカー大阪・野村悠翔【 #人生に刻むラストゲーム|Fリーグ】
今大会一の接戦となった、シュライカー大阪と立川アスレティックFCによる準々決勝。 2-2のまま決着はつかず、勝敗の行方はPK戦に託された。 静まり返る会場で、大阪はGKとポストに阻まれ2本のシュートを決めきれず、ベスト8で大会を去った。 試合を終え、すでにクラブからの退団が発表されている齋藤日向と計森良太の2人の生え抜き選手が、取材に応じる。その後ろでチームメートと談笑しているある選手の姿を見かけ、思わず呼び止めた。齋藤と計森と同じく今シーズン限りでの退団が決定している野村悠翔だ。 これまで野村に取材をしたことはなかったが、ピヴォとは思えないほど物静かな性格をチームメートからよくいじられていることだけは知っていた。 大阪で2年間を戦った、“寡黙な点取り屋”はどんな人物なのか……。 そんな動機で声をかけてみると、思いもよらない今後の野望と、ポーカーフェイスに隠された思いを語ってくれた。 取材・文=青木ひかる
“味方だけどライバル”という意識で
遡ること7年前。高校を卒業したばかりの野村は、地元・岐阜県の2部リーグを戦うサリスタに加入し、競技フットサルの世界に足を踏み入れた。翌年には、東海フットサルリーグ1部を戦うロボガトフットサルクラブに移籍し、2019年に名古屋オーシャンズサテライトへ。2年間の“修行期間”を経て、2021-2022シーズン開幕を前に念願のトップチーム昇格を叶えた。 地域リーグから這い上がり、“Fリーグ最強軍団”の一員となった野村。順風満帆かと思えたキャリアだったが、現実はそう甘くはなかった。 「それまでは、点を取る自分に周りの選手もパスを集めてきてくれました。でも、名古屋ではそうはならない。プロクラブである以上、メンバーに生き残るためにみんな必死で、一人ひとりが自分の良さを出そうという意思がとても強い。なので、サテライトでは自分のところに来ていたパスが、全然回ってこなくなってしまって……。最初はすごくストレスでしたけど、途中からは『負けないように頑張ろう』という気持ちに切り替えて、ポジションを奪うために“味方だけどライバル”という意識を強く持って、ずっと練習や試合に取り組んできました」 反骨心を糧に少ない出番でも力を発揮することを心がけ、2ゴールを決めたものの、出場時間は伸び悩んだ。 「もっと試合に出たい」 野村は1年での退団を決意。リーグ設立から16年間で唯一名古屋からリーグタイトルを奪った大阪へと、活躍の場を移した。