現実味帯びるUAEのOPEC脱退、原油生産枠の拡大望みサウジアラビアと対立か、脱退なら原油急落も
■ 水面下でUAEとサウジが対立 脱石油経済化の試みは資材価格の高騰などのインフレの逆風にさらされている。 脱石油経済化を進める資金も枯渇しており、サウジアラビア政府は、国営石油企業サウジアラムコ株を追加売却して100億ドル規模の資金を調達せざるを得なくなっている。 原油価格に下押し圧力がかかることから、サウジアラビアはUAEの生産枠のさらなる拡大に難色を示していることだろう。 サウジアラビアとUAEの間の水面下の対立が昨年から続いており、筆者は「今回の会合後、UAEがOPECから脱退するのではないか」と危惧している。そうなれば、OPECプラスの求心力は一気に低下し、原油価格は急落してしまうのではないだろうか。 最後にサウジアラビアに関する内外の動きについて述べてみたい。 サウジアラビアの国営通信は「肺炎治療を受けていたサルマン国王(88歳)が28日、オンライン形式で閣議を主宰した」と報じた。最悪の事態は避けられたものの、「国王の健康」は引き続き頭の痛い問題だ。 【関連記事】 原油に新リスク…イラン大統領死去より深刻なサウジアラビア王位継承問題、皇太子の訪日ドタキャンの裏に権力闘争か サウジアラビアを巡る大国間の綱引きも生じている。 米国がサウジアラビアへの防衛協力などの強化をテコにサウジアラビアとイスラエルの国交正常化の流れを後押ししているのに対し、イランが対抗手段に乗り出している。 イランの国営通信は25日、「モフベル大統領代行の要請に応じ、サウジアラビアのムハンマド皇太子が同国を訪問する」と報じた。具体的な時期は明らかにされていないが、両国は昨年3月、中国の仲介で外交関係を正常化している。 サウジアラビアとUAEの2国で日本の原油輸入の8割以上を占める。両国の今後の動静についてより一層の注意を払うことが必要なのではないだろうか。 藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー 1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。
藤 和彦