NPBだけで200勝はもはや不可能なのか?
30歳までに多くの勝利を積み重ね、35歳までに200勝を達成する北別府型と、35歳を超えても勝利を挙げ続ける工藤&山本昌型、現在の野球で200勝を挙げるにはこの2つのタイプが考えられる。しかし当然のことながらどちらも簡単なことではない。北別府型の場合、当然早くから活躍をすることになるのでMLBへ挑戦してしまう可能性が高くなる。実際北別府を超えるペースで勝ち星を挙げていた松坂、ダルビッシュ、田中は全員海を渡った。彼らのペースを北別府と比較したものが表3である。仮に彼らがNPBに残り続けていた場合、35歳前後で200勝に到達していた可能性は十分にあっただろう。
工藤&山本昌型の難しさを示すのが表4である。これは1970年代以降にデビューし165勝以上を挙げた、斎藤雅樹、星野伸之、桑田真澄、西本聖の勝利数推移だ。26歳で100勝に到達した桑田をはじめ、4人とも工藤や山本昌を上回るペースで勝ち星を積み上げていた。しかし4人とも34、35歳のシーズンを境にペースが落ち、38歳のシーズンを迎えることなく引退している。200勝に到達した北別府の場合も35歳の14勝を最後に2ケタ勝利はなく、37歳で引退している。長年一線級で活躍してきた投手が35歳を超えてなお勝ち星を積み重ねるのは並大抵のことではないのである。
では現役で200勝に届く可能性のある投手はいないのだろうか?北別府型で200勝を挙げる可能性があるのは広島の前田とロッテの涌井だ(表5)。前田は26歳だった昨シーズンまでに82勝を挙げている。これは北別府よりは約10勝遅いペースながら現役のNPBの投手の中では最もハイペース。しかし似たペースで勝ち星を積み重ねていた、松坂、ダルビッシュ、田中と同様に近々海を渡る可能性は高い。涌井は25歳までに79勝と北別府とほぼ同じペースで勝っていた。しかしその後2年間で1勝、5勝と大きくペースを落としてしまった。ロッテに移籍した昨年は8勝、今季もすでに5勝と持ち直してきてはいるものの、2年間の停滞によって200勝の可能性はかなり小さくなってしまった。