「ヤンキー」は蔑称? それとも愛称? 球団名にもあるけれどそもそもどんな意味なのか
大リーグのチーム名にもなっている俗な米語の語源と変遷
ニューヨーク・ヤンキースは、121年前にメジャーリーグベースボール(MLB)が発足した当初から存在した。MLBが開幕した今、あらためてヤンキーの語源を探ってみたい。それは侮蔑的な言葉なのか? あるいはさまざまな文化圏の人が混ざり合って生まれた発音の間違いなのか? はたまた単なる無害なスラングなのだろうか? ギャラリー:米国の謎の猿人「ビッグフット」を探す 写真16点
オランダ語を探れ
「ヤンキー」は米国北東部ニューイングランド地域の出身者を意味する愛称だったというのが、有力な説の1つだ。 ジャーナリストで作家のビル・ブライソン氏は著書『アメリカ語ものがたり』の中で、初期のオランダ人入植者が英語に大きな影響を与えたと書いている。「クッキー」「ワッフル」「ベッドスプレッド」「ボス」「コールスロー」といった言葉はすべてオランダ語に語源があるという。 ばか者を意味する「ニットウィット(nitwit)」という英単語は、オランダ語で「私は分からない」を意味するIk niet wietに由来しているし、米国人がよく口にする「how come?(どうして?)」は、オランダ語のhoekomを文字通り訳したものだとブライソン氏は説明する。 ヤンキーに関しては、ジョナサンの愛称である「ヤンケ(Janke)」、あるいは侮辱的な「ヤン・キーズ(Jan Kees)」という表現からきているのではないかとブライソン氏は見立てている(オランダ語でJの発音は英語のYに近い)。1683年ごろ「キャプテン・ヤンキー(Captain Yanky)」と呼ばれたオランダ人海賊がいたという記録が残っていることを考えると、前者の説明は納得がいく。 17世紀にオランダが北米東部に建設した植民地「ニューネーデルラント」が最終的に「ニューイングランド」と呼ばれるようになっても、南部の人々は北部に暮らすオランダ人を、親しみを込めずともJankeと呼んだことだろう。 1891年の小説『An American Girl in London(ロンドンの米国人少女)』の中で、著者サラ・ジャネット・ダンカンは、「ヤンキーとはニューイングランドの人々のことで、かつては蔑称として使われていた」と書いている。また、『The Secret Life of Words: How English Became English(言葉の秘められた歴史:英語はどう英語になったか)』の著者ヘンリー・ヒッチングズ氏は「早くても1600年ごろには、そのオランダ人はどこへでも出向くことから、俗に『バターボックス(butterbox)』と呼ばれていた」と書いている。 17世紀初頭から18世紀にかけ北米には多くのオランダ人がいた。彼らが言語の中に大きな痕跡を残したのも当然だろう。