ハガレンに寄生獣でも! 恐ろしい敵だったのに…みるみる「光落ち」した漫画キャラたちの魅力
■幽助の眩しさに惹かれていった『幽遊白書』飛影
続いては冨樫義博さんの漫画『幽☆遊☆白書』より飛影。主人公側の中でも明確に強キャラであり、必要以上に喋ることを嫌うクールなイケメンキャラである。そのため、漫画やアニメが放送されていた当時は、少年読者だけでなく女性読者からの人気も高かった。 物語を通して見ると、飛影は幽助たちの味方として活躍する場面がほとんどのため、むしろ主人公のライバルキャラ的な印象が強い。だが物語の最序盤での彼は、妖怪盗賊という肩書きだった。女性に毒を飲ませて身柄を返し、幽助に剣の柄の中に仕込んだ解毒剤を奪わせるなど行動は卑劣。おまけに口が悪く、「バカ野郎がマヌケは貴様だ!!」「女の運命はオレの手の中にあるのだ!!」と、中盤以降と比べると初期の飛影は雑魚的な小物感あふれる言動が目立っていたキャラでもあった。 そんな彼は、幽助の言葉や行動で“ハッ”とするシーンも多かった。そしてその後は悪者にはふさわしくないような行いをし、長年行動をともにしてきた蔵馬から指摘されることも。 幽助に負けたことで大きな心境の変化があったのか、妖力が大幅に弱くなったことで余裕がなくなっていたための性格の変化だったのか……。この性格変化は作中では説明されていないが、幽助と関わったことでガラリ性格が変わった、まさに“光に落ちた”キャラである。
■涙なくして読めない『寄生獣』田村玲子の最期
最後は、Netflixでの韓国ドラマ『寄生獣 ーザ・グレイー』も好評配信中の、岩明均さんの漫画『寄生獣』より、主人公・新一にとっての初めての強敵・田宮良子。 突如宇宙から飛来した謎の生物に脳を寄生された人間が、人間を襲うようになった世界を描く同作。田宮は新一の通う高校に赴任してきた女性教師で、その正体は寄生生物だった。他の寄生生物とは違い、極度に論理的で好奇心旺盛な一面を持ち、人間社会に溶け込みながら人間を食い殺しつつ生活するという、冷酷で理知的なキャラ。しかも、その頭脳を活かしているため、戦闘力にも優れていた。 彼女は「自分たちはどうして生まれてきたのか」を問いながら生きており、右腕の寄生生物とともに共存していた主人公の新一に強い興味を抱いていた。その興味は、顔を変えて「田村玲子」として生きるようになってからも続く。そして右腕・ミギーと生きる新一を観察する中で、人間との共存を結論付けるに至ったのだ。 田宮良子こと田村玲子は、“生殖実験”のために妊娠し出産するが、赤ん坊に何の感情も抱いていなかった。だが、新一や人間を観察していくうちにそれが次第に変化していく。そして彼女は最後、警察らによって殺されてしまうのだが、自らの体を盾にすることで赤子を守り、それを新一に預ける。それまで描かれていた寄生生物の頃とはまったく異なった行動だった。 主人公と共に戦うという、バトル漫画のような定番の展開はないものの、恐ろしい敵が主人公をきっかけに“光”を見つけた、漫画史に残る名シーンだろう。 じわじわと内面が変わっていったり、別人のようにガラリと変わったり、漫画の定番である、「光落ち」。もともとの「闇」のイメージとのギャップが強いほど、その魅力に惹かれてしまうものだ。
ファンキキ