G7、ロシア凍結資産の活用で合意 ウクライナに500億ドル支援
主要7カ国首脳会議(G7サミット)はイタリア南部プーリア州で現地時間13日午前(日本時間同日午後)、開幕した。G7は欧米などで凍結されたロシア資産の運用益を活用し、ウクライナに対し、500億ドル(約7兆8000億円)規模の資金支援を実施することで合意した。米政府高官が明らかにした。 【写真】ウクライナ侵攻以降、ロシア人の主な移住先 米政府高官によると、G7が資金を調達し、新設する基金に融資。基金が年内にウクライナに供与する。調達した資金の返済に凍結したロシア資産の運用益を充てる。多額の支援資金を一度に調達し、時間をかけて返済する方式だ。 欧米が凍結したロシア資産は総額約3000億ドルに上り、その3分の2は欧州の証券集中保管機関「ユーロクリア」で保管されている。ユーロクリアは、凍結資産から年間で最大50億ドル程度の運用益を出している。 この運用益をウクライナ支援にどう使うかを巡っては、米国と欧州で意見が割れていた。欧州連合(EU)は運用益を欧州の基金に移し、軍事支援などに充てることを5月に決めた。だがこの場合、ウクライナへの供与額は年間30億ドル程度にとどまる。米国は戦況に大きな影響を与えられるメリットなどから、10倍以上の額を一度に供与できる案を主張し、G7各国を説得した。 ただ、戦争終結などでロシアの資産凍結が解除された場合などに、返済資金の元手がなくなるなどの問題が残っており、G7は今後、制度の詳細を協議する。 また米政府は12日、ウクライナに侵攻するロシアに対する追加制裁を発表した。軍需物資の生産などに関わるロシア国内外の300以上の団体や個人が対象。中国の金融機関などを念頭に、制裁の対象者と取引した金融機関は制裁を受ける可能性があるとしており、制裁逃れの「抜け道」をふさぎたい考えだ。 一方、G7は共同声明で、中国政府が補助金を出して電気自動車(EV)などの自国製品の輸出を後押しする「過剰生産問題」に対し、一致して取り組むことなどを盛り込む方向で調整している。米政府高官が明らかにした。中国は「過剰生産は存在しない」と一貫して主張しており、G7は結束して中国への圧力を強める方針だ。 岸田文雄首相は13日の討議で、「アフリカ諸国との連携を一層強化したい」と表明。「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の堅持と、グローバルサウス(新興・途上国)をはじめとするG7を超えた国際的なパートナーへの関与の強化は、中東情勢の緊迫化など新たな挑戦に直面している中で一層重要だ」とも強調した。【バーリ(イタリア南部)松井聡、宮川裕章、影山哲也】