書道の半紙が9万円、古いゲーム機が19万円で売れ…「やっておけばよかった」親の代わりに生前整理
新生活がスタートする春。引っ越しや、環境の変化によって部屋の広さが気になり始めるのではないだろうか。現在の住まいよりも片づけが憂うつになるのが、古くから手を付けられずにいる実家。一説には、実家の片づけにかかる費用は、数十万から百万といわれている。莫大(ばくだい)な費用がかからないようにするためにも、日ごろから片づけの習慣が重要だ。 【金価格の推移】NISAでできる賢い「金」に投資する方法とは 「生前整理を始めるのに、年齢は関係ない」そう語るのは、六六三六というお笑いコンビとして活躍する傍ら、関東近辺で遺品整理や生前整理、ゴミ屋敷の片づけを行う業者に勤務している、お片づけシバタ君こと柴田賢佑(しばた・けんすけ)さん。お笑いコンビ・マシンガンズの滝沢秀一のイベントに登壇し講演を行うなど、ラジオやSNSを中心に、リユース情報や社会問題を発信し注目を集めている。そんな柴田さんに、生前整理の効率的な進め方を聞いた(以下、「」内の発言は全て柴田さん)。 ◆生前整理にすべきか、遺品整理にすべきか見極める方法 生前整理がスムーズに進められず頭を悩ませている場合でも、解決策は意外な方法であるようだ。 「親が生きているうちにある程度の整理を進めることができているほうが、亡くなったあとに片づける側も楽なのですが、実は遺品整理の方が向いているケースもあります。実家の片づけって、親子関係が重要。親との関係が良好か、兄弟の有無、親の資産、親に片づける意思があるか、実家が近いかという複数の要素で、無理に生前整理を進めなくてもいいかどうかを判断できます。 例えば、親と仲が良くなくて資産がある場合には、親の片づける意思によって生前整理、遺品整理のどちらでも対応できますが、親との関係が悪く、資産もなく、実家が遠く、さらに親に片づける意思がない場合には、無理に生前整理に踏み切らず遺品整理を考えるのも手です。 親に片づける意思がない状態で手を付けても、親のほうが“もういいや、やらない”ってさじを投げてしまう。お互いにストレスになってしまい心身ともにくたびれてしまいますし、最悪、親子の縁が切れてしまうこともあります。逆に言えば親子関係が良くて、資金も潤沢にある場合はうまく進められる可能性が高いです」(同前) 親との関係が悪い上に資産も相続も無い場合は、遺品整理のほうがスムーズだそうだ。 「よっぽど悪質な業者に頼まなければ、相続に必要な権利書や通帳も見つけてくれるし、遺品整理のほうが断然早いです。“思い出の写真も何もいりません”というケースの場合ですが。お子さん本人が重要書類の保管場所を把握しているのであれば、不要なものを片づけるだけなので、大体一日で整理が終わります」(同前) 生前整理にしろ、遺品整理にしろ、最も時間がかかるのが思い出を整理することだという。親と仲が良い場合には、生前整理は思い出をうまく昇華できる機会だそうだ。 「個人的には生前整理はしたほうがいいと思うのです。それは、親子で必要な物かどうかを分けながら、“これはお父さんが被っていた帽子だね”と、思い出にひたれるから。実家には、過去が蓄積されている。それを掘り起こして、過去にあった思い出だけを抜いて、捨てるのかリユースに回すのかを決めていくことができます」(同前) ◆親と揉めずに済む、生前整理のコツは“所有権の変更” 生前整理の一番のきっかけとなるのは転居だという。長年住み慣れた家から離れるのは至難の業だが、生前整理についてはメリットが多い。 「お金に余裕があって、親の理解もある方は転居をおすすめします。人数に合わせた広さの部屋に引っ越すことになるので、持っていける荷物の量をどうしても減らさないといけない。転居の際に持ち家であれば、相続の話もできる絶好のチャンス。荷物もすっきりさせられるし、個人的には介護付き施設への転居が安心かなと思います」(同前) しかし、引っ越し自体も容易なことではない。転居を伴わずに、親と揉めることなく片づけることができる、柴田さんならではの方法を聞いた。 「親って、人から貰ったものは誰かに使ってほしいものです。その場合、親の不用品を引き取ってしまいます。例えば、眠っていた贈答品の毛布やタオルを “これちょうだい”と言って、自分が実家で暮らしていた当時の子ども部屋に、親からもらった物をどんどん置いていく。持ち物の所有権を自分たちに変えるのです。そうすれば親が亡くなったときに、そこの部屋にあるものは自分でどうするか決められるようになる。 ちなみに贈答品の箱入り毛布は、1個ずつメルカリに出品すれば、1円で売れる。そういうフリマアプリも、老人向けに分かりやすくしてくれればいいんですけど(笑)。親世代も捨てたのではなく、売れたって聞いたら手放しやすくなりますよね」(同前) 数多くの遺品整理の現場を見てきた柴田さんは、生前整理を始めるのに、年齢は関係ないと言う。 「生前整理って、おじいちゃんになってから始めるものではない。自分が生前整理をするという意識があれば、始めるタイミングはいつでもいい。でも高齢の方にそう考えろというのは、難しいです。いま70代や80代の親に対してアプローチするなら、片づけが必要だと気づいた時点で、生前整理の意思があるのかをまずは確認してみてください」(同前) ◆カビた半紙が9万円に! ゴミに見えて高額な値がつくジャンク品 一般的な家庭でよく処分品として出される食器は、投棄ゴミ扱いのため処分にも費用がかかってしまう。不用品を処分する際、なるべく費用がかからないようにするためには、どうすればいいのだろうか。 「普段から、破棄するときのことも考えて購入するようにするしかないです。ブロックやレンガも、投棄ゴミなので処分に費用がかかる。ブロックを買うときには、一生手放せないと思ったほうがいいと、(お笑いコンビ)マシンガンズの滝沢さんも言っていました(笑)。 あとは不用品を業者に買い取ってもらって、作業代が無料になったケースもあります。ビデオデッキとかレコーダーって、粗大ゴミとして破棄しがちなのですが、コレクターがいるのでジャンク品でも値段がつくことがあるんですよ! コンスタントに値段がつくのは、SONYのポータブルプレーヤー。初代なら数十万の値がつくこともあります」(同前) もしかしたら、実家で眠っているガラクタが、お宝の山になることもあるかもしれない。 「値段がつきそうだと思ったら、メルカリかヤフオクで売るのがベスト。商品の情報が分からなくても、写真を載せて型番を書けば、見る人が見たら分かります。僕がいままでで一番ファインプレーだなって思ったのが、使いかけのカビていた書道の半紙。捨てようとしていたものを、オークションに出したら9万円の値がついたんです! ほかにも、ポケモンジェットANA限定デザインのゲーム機『NINTENDO64』も19万円になりました。貴重そうだと思ったら、一度オークションに出してもいいですね」(同前) ◆部屋に“しゃれこうべ”、ゴミ屋敷に住んでいた男性の孤独死の現場 柴田さんが語る片づけられない現場の記憶は、想像を絶するケースだった。 「ゴミ屋敷に住んでいた男性なのですが、バイクが好きでヘルメットがいっぱいあった。作業員が奥のほうにあったヘルメットをつかんだら、頭蓋骨だったらしいんです……。もちろん作業は中断して、警察を呼びました」(同前) 最後に柴田さんの片づけ経験から、生前整理を自らの手で行っておいたほうがいいものがあるという。 「娘さんが“亡くなった父は厳格でつまらない人でした”って言うんですよ。でも片づけてみたら、天袋から大量のアダルトビデオが出てきたんです(笑)。あとで恥ずかしくないように、生前にそういう片づけはやっておいたほうがいいですね」(同前) 幸先の良い新生活のスタートを切るためには、身辺整理から始めたほうがよさそうだ。 【PROFILE】柴田賢佑(しばた・けんすけ) 1985年9月25日生まれ、北海道出身。お笑いコンビ「六六三六」を’07年に結成。以降、お笑いライブ出演を軸に活動。現在はコンビ活動の傍ら、生前整理、遺品整理、ゴミ屋敷の片づけを行う業者にも所属し従事している。そのほか芸人・ぐりんぴーす落合とともに「お片付けブラザーズ」というユニットを組み、地域に沿った分別・片づけの手伝いや、リユースサポートを行っている。“お片づけシバタ君”の愛称で知られ、SNSや講演活動などで情報を発信中。 取材・文:池守りぜね
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