中学軟式の消滅は「最大の懸念」 “成長途中”の受け皿へ…教員一体で示す模範例
部活動停止で硬式クラブに選手流出…成長過程でも「続けられる環境を」
国が部活動の地域移行を打ち出した当時、武田GMには、今の川口クラブとは違う運営方法も選択肢にあった。自身が顧問を務める中学校や、近くの中学校の生徒だけを対象にした地域クラブの設立だ。この方が規模は小さいため、圧倒的に手間がかからない。しかし、武田GMは市全域で仕組みをつくる道を選んだ。 「新型コロナで部活ができなくなった頃、軟式野球部の生徒が硬式のクラブチームにかなり流れました。部費を払っているのに全く試合に出られない選手が増えると、高校で野球を続ける選手が減ってしまいます。軟式野球を受け皿として残すことが大切です。軟式野球がなくなってしまうことが最大の懸念だったので、川口市全体で競技人口を減らさないように、まとまって活動しようと考えました」 小・中学生の年代は野球歴や体の成長に差が大きく表れる。園児や小学校低学年で早くから野球を始めたり、成長期が早く来たりした選手は、中学生で硬式のクラブチームを選択しやすい。だが、そうではない選手は中学の野球部や軟式のクラブチームがなければ、野球をやめてしまう可能性が高い。 小学校卒業と同時に野球をやめる選手が増えれば、中学野球や高校野球の競技人口も必然的に減っていく。武田GMは「仕組みができれば、部活が完全に地域移行されても子どもたちは野球を続けられます。学校の施設や教員のリソースは地域移行で不可欠になると思っています」と語る。 部活動の地域移行で、指導者や場所といったハードルがあるのは間違いない。しかし、現状を嘆いたり、不満を漏らしたりするだけでは何も変わらない。子どもたちの環境を整えるのは大人や地域、国や自治体の役割。川口クラブのように、行動に移して形を示している例もある。
間淳 / Jun Aida