『映画 マイホームヒーロー』津田健次郎インタビュー──「見どころは家族の物語ということ。アウトロー集団にも、仲間同士の絆はちゃんとあるんです」
3月8日公開の『映画 マイホームヒーロー』で、主人公を執拗に追い詰める最恐のラスボスを演じている津田健次郎。チェロのように優しく響く声と、その穏やかなキャラクターを封印して挑んだ本作について話を訊いた。 【写真を見る】ツダケン、癒し系キャラを封印!
津田健次郎、GQ JAPANに初登場
インタビューが終わると、机の上に置かれた「GQ MEN OF THE YEAR 2023」が表紙を飾る2024年2月号に手を伸ばし、興味津々の様子でページをめくる津田健次郎。ロケにマイカメラを持参するほど無類の写真好きな津田は、低く響く穏やかな声で「あぁ、カッコいいなぁ……」とつぶやく。話題作とあって、この日だけでもいくつもの取材を受け、相当慌ただしいはずなのだが、その瞬間だけはまるで食後のコーヒーを味わうかのように、穏やかな空気に包まれるから不思議だ。声の力なのか、本人の人柄なのか──あるいはその両方なのだろう。「GQ JAPANさんの賞に選んでいただけるように、僕も頑張ります」。にこやかにそう話すと、雑誌を片手に取材現場を後にする津田。2023年~2024年にかけて、声優業はもちろん、ドラマや映画での活躍も目覚ましい津田が、そこに名を連ねる日が楽しみだ。
実写でも悪役解禁、津田流の役作りとは
『映画 マイホームヒーロー』は、娘の彼氏を殺したサラリーマン・鳥栖哲雄(佐々木蔵之介)が主人公。殺人犯となってしまった主人公を追う半グレ集団に、ミステリー小説の知識と勇気と家族愛で立ち向かう──というスリリングなストーリーだ。ドラマ版の続編となる映画版では、新たに登場した半グレ集団“間野会”のトップ・志野(津田健次郎)が、ラスボスとして主人公を追い詰める。 「アニメ作品ではたくさんの悪役を演じてきましたが、実写作品であそこまで振り切った人物を演じる機会はなかったので、志野役で出演のオファーをいただいた際はすごくうれしかったです。撮影に入る直前にあった衣装合わせの際に、志野という男の個性や人となりについて青山貴洋監督とお話しできたのですが、監督からは『普通の悪役ではなく、よりクセの強い悪役にしたい』と伺いました。役者としてはそんなに楽しいことはない。『いいんですね!?』と、いっそう気持ちが高まりました。ちなみに、志野という男の人物像を表現する上では欠かせない衣装も、かなりこだわっています。あのスーツは、わざわざ仕立ててもらったものなんです。僕自身も、志野をお洒落な人物と想像していましたが、そんなところからも、監督や制作陣の気合いを感じました」 組織の仲間を殺した犯人を追う志野は、容赦なく主人公を脅す。いつキレるかわからないうえ、キレた時の振れ幅は想像以上だ。津田はそんな男を演じる面白味をこう語る。 「台本に書かれていない部分も自分で想像して、役作りをしていきました。個人的に面白いなと思ったのが、間野会の事務所で、志野がポップコーンやコーラを飲み食いしながらサッカー中継を見ているシーン。普通だったら酒を飲んでいてもおかしくないのですが、志野という男は酒を飲まなんです。シラフであれほど頭がキレているなんて、逆に怖いでしょう? 半グレ集団であれば、酒や薬物に溺れている描写によって怖さを表現することもできると思うのですが、あえてシラフのまま……というのが、なんだか怖いなと。撮影当時、原作ではまだそれほど志野が登場していない段階だったこともあり、ヒントになる情報が少なかったんです。それもあって、映画版の志野は僕が思う狂気性みたいなものを『やっちゃえ!』という感じで、思う存分に表現しました。志野の振れ幅の大きさは、肉体的な反応に近いかもしれません。おそらく志野のような人物は、生きるエネルギーが人一倍強い。普通の人より、体温も1~2度高いというか。車で例えるなら、ずっとアイドリングしている状態に近い。そしてそのアイドリングが止むことは、おそらくない。常にエンジンが温まっているからこそ、軽くアクセルを踏んだだけで、急発進できちゃうんですよね。ただ、そのトリガーがどこにあるのかは、誰にもわからない。そういったところから、志野の面白さを表現して演じていました」