【M-1王者・令和ロマン】の美容と、劇的変化が気づかせてくれた「あまりにも大切なもの」
いずれにせよ昔の男の化粧は、美しくなるためという単純なものではなかったのがよくわかる。現代美容にはない「風流」という日本だけの美意識を宿し、情緒的にも洗練され、洒落者としてのアーティスティックな趣深さを示してる。言い換えれば人間の色気を引き出すための流儀。英語におけるセクシーが性的魅力のみならず、人間的な奥行きも意味するように、明治維新までの長い時代、男の化粧は、異性にも同性にもアピールする人としての艶めかしさを宿す大切な手段であったのだ。 “ダイバーシティー”が注目され、コロナ禍に、リモート会議で否応なしに自分の顔を見せられたことで、男の美容は一気に裾野が広がってきたけれど、ざっくり「男もキレイになるべき」というぼんやりした提言に、「清潔感を保ち、好感度を高めるもの」という定義を超えることはできていない。若い層にもうまったく抵抗はなくても、40代以降にとってはまだハードルが高い。でももし男の美容が、じつは人間としての奥行きや魅力を醸成していくものだとしたらどうだろう。それならばという人が、増えてくるのではないだろうか。 撮影/渡辺宏樹(TRON) ヘアメイク/KATO(TRON) スタイリング/井田正明 取材・文/金子優子 Edited by 佐藤 水梨
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