ゴリラ一筋の画家・阿部知暁さん、仙台で個展「ゴリラの数だけゴリラの人生がある」
39年間ゴリラ一筋に描き続けてきた画家の阿部知暁(ちさと)さん(67)=埼玉県春日部市=が12月4~10日、仙台市青葉区の仙台三越で絵画展「思い出のドン」を開く。市八木山動物公園フジサキの杜(太白区)の人気者だったニシゴリラの雄「ドン」と雌「ローラ」を緻密に表現した新作など約60点を展示する。(せんだい情報部・吉田ちひろ) ドンとローラは1971年に八木山動物公園に来て、市民に長年親しまれた。 2頭を描いた作品は約20点。年齢で変化する表情や体毛一本一本を繊細に描写した。葉の付いた枝をくわえたあどけないローラのペン画、晩年のドンを正面から捉えた油彩画の大作が目を引く。 阿部さんがゴリラをモチーフに選んだのは大阪芸術大を卒業後、先輩の画家に「好きなものを描きなさい」と助言を受けたのがきっかけ。「ゴリラの数だけゴリラの人生がある。こういうゴリラをこんなポーズで描きたいという発想は尽きない」と話す。 八木山動物公園でドンとローラに出会ったのは87年。「すらっとした男前と、かわいらしい女の子」と見とれた。 相撲取りが塩をまくように、ドンが投げた砂をかぶったのは忘れられない思い出という。宮城県石巻市にある夫の実家に帰省するたびに園を訪れ、約30年にわたって描き続けた。 ザイール(現コンゴ民主共和国)のジャングルでピンクの花を見つめるマウンテンゴリラの「サラマ」、東京・上野動物園で初めて飼育されたニシゴリラの「ブルブル」…。絵画展では、阿部さんを魅了した国内外のゴリラの作品も並ぶ。 ニシゴリラは世界的に頭数が少なく、絶滅危惧種に指定されている。ローラは2007年に推定37歳で、ドンは19年に推定50歳で天国へ旅立った。あるじのいなくなったゴリラ舎は25年以降取り壊される。 阿部さんは「仙台にもゴリラがいたことを子どもたちに知ってほしい。絵を通して現場で見て感じることの大切さを伝え、好奇心を育てる手伝いをしたい」と話す。 本館7階アートギャラリーで、午前10時~午後7時(最終日は午後4時まで)。入場無料。連絡先は仙台三越022(225)7111。
河北新報