作家・綿矢りささんが“美しさ”に向ける眼差し。「根拠のない自信を持つことも今の時代には必要だと思う」
「明日の私をMAKEしよう」綿矢りさ、楽しんでるっていい
20年以上にわたり執筆を続けている、綿矢りささんの創作活動における原動力や、“美しさ”に向ける眼差しに迫ります。 【写真】綿矢りささんの“美しさ”に向ける眼差しとは?
メイクやファッションが創作の刺激になることも
衣装候補を前に「着てみましょうか?」と提案してくれた綿矢りささん。数着ほど試し、決定したのはオレンジのワンショルダー。難易度の高いデザインを軽やかに着こなす姿からは、ファッションに対する関心の高さが伝わってくる。そんな綿矢さんは17歳の時に作家デビューし、19歳で芥川賞を受賞。感情をリアルに描く彼女の小説は、時代の空気を映すディテールも秀逸。新作『パッキパキ北京』でも中国のトレンドが詳細に描かれているが、聞けば自身も二年前に北京に滞在。その際に中華メイクにハマったという。 「日本と違い、やりすぎなくらい顔を作り込む点が面白いところ。コスメも派手色が多いですが、個人的には陰影で魅せるMAOGEPINGのパレットが気に入っています。小説に描く服装やメイクによって文章も変わるので、私にとってメイクやファッションは創作の刺激を与えてくれるものでもあるんです。執筆中はすっぴん&メガネ姿ですけどね(笑)」
美の流行が移り変わっても楽しむ姿勢は変わらない
小説を通じ、女性の自意識の在り方を様々な形で描いてきた綿矢さん。ここ20年の“美しさ”に対する意識の変化をどう捉えているのだろうか。 「20年前というとコンサバ系やギャルメイクの時代かな? そこからタレ目やおフェロ顔などが流行って、今はナチュラル系が主流。改めて振り返ると、どの時代もみんなメイクで顔が変わることを楽しんでいたなって感じます。流行の変遷はあっても、そこの関心が尽きたことはないんですよね。今は情報が増え、男性もメイクをする時代。もちろんキレイになるという目的がありつつも、根底にはやっぱり“楽しみたい”という気持ちがある気がします」 一方で、技術や情報量が発展した現代は、美の追求に限度がない面も。美容整形を題材にした作品を執筆したこともある綿矢さんの考えとは? 「整形は痛みを伴うもの。それでも何度も繰り返す人もいて、私はそこに勇敢さを感じるんです。そういった選択に警鐘を鳴らす人もいるけれど、“いいじゃん”と突き進む人の強さも面白いなって思いますね」 “こうあるべき”に縛られる必要はなく、美しさの正解を決めるのは自分。そんな自分軸を尊重する姿勢は、自己肯定感に関する回答からも感じられた。 「自己肯定感って人からの評価や努力を根拠として培われることが多いけれど、私は根拠がなくてもいいと思うんですよ。バカボンのパパのように“これでいいのだ”と自分に思えたら無敵なんじゃないかなって。今はそういう人を失笑する風潮があるからこそ、何にも左右されない自信を持つことも大事だと思います」 ●作家 綿矢りさ 1984年生まれ、京都府出身。2001年に『インストール』で文藝賞を受賞し、作家デビュー。2004年に『蹴りたい背中』で芥川賞、2012年に『かわいそうだね?』で大江健三郎賞を受賞。『勝手にふるえてろ』『ひらいて』など、映像化された作品も多数。 待望の新刊! 『パッキパキ北京』 時はコロナ禍。北京に単身赴任している夫の元にやってきた元銀座の高級クラブ嬢・菖蒲の目まぐるしくもパワー溢れる駐妻ライフを疾走感のある文章で描いた傑作。¥1595 綿矢りさ著 集英社 MAQUIA 6月号 撮影/花盛友里 ヘア&メイク/KUBOKI〈aosora〉 スタイリスト/平田雅子 取材・文/真島絵麻里 企画・構成/横山由佳(MAQUIA) トップス¥58300、スカート¥88000/KEIKO NISHIYAMA サンダル¥11900/CHARLES & KEITH JAPAN(CHARLES & KEITH) ピアス¥170500、バングル¥693000/CA JITSU(Ted Muehling) リング¥13200/ロードス(YArKA) ※本記事掲載商品の価格は、税込み価格で表示しております。