平均年齢は68歳――年寄りが年寄りを面倒みる時代に「なんちゃって舞子」が舞い続ける理由 #老いる社会 #ydocs
明るく高齢者を励ますメンバーもお互いに支え合う
2023年の年の瀬。村山市の南東隣にある東根市の老人介護施設のクリスマス会に4人の姿があった。 テンポのいい音楽に合わせて、傘を回しながら右に左に舞う。サンタクロースが被る赤い帽子を被った高齢者たちが、手を叩きながらなんちゃって舞子のショーを楽しんだ。 踊りがひと段落すると、トークのコーナーだ。MC役の古瀬さんが話し出すと、すぐに咳き込んだ。「大丈夫」との声が上がる中、古瀬さんが「血圧上がってきましたね。200ぐらいでしょうか」と続けると、施設内が明るい雰囲気に包まれる。ちょっとしたアクシデントもすぐに笑いにつなげるところはさすがベテランだ。 さらに古瀬さんと施設の高齢者のやり取りが続く。古瀬さんが利用者の女性のところにマイクを持って近づき、「お母さんも、今度舞子に入ってもらわんねべか~」と語りかける。利用者の女性はうれしそうに「今まで83年生きてきて一番楽しかった」と語った。「そだなこと言われっとよ、うれしいです。おばあちゃん、ありがとさまなあ、また呼んでください」 なんちゃって舞子のチームには、実は4人のほかに村川サチ子さん(92)と黒田マサゴさん(88)という2人の炊事班がいる。村川さんと黒田さんは、ショーを終えた4人のために料理を作って待っていた。4人が帰ってくると、温かい芋煮で迎え、6人でガールズトークが始まった。 古瀬さんは週1回、炊事班の2人の買い物を手助けする。車のない2人にとって、古瀬さんは頼りの綱でもあるが、何より買い物に行くのが楽しみでもある。メモ帳に欲しい物を書いて、その日を待つ。 村川さんは「私なんか一人暮らしだから……古瀬様、さまさまだ」というと、古瀬さんは「今は年寄りが年寄りを面倒みる時代」と話す。メンバーはよく村川さん宅に集まっては、茶飲み話をする。テーブルには、樽石さんが作ったおいしい漬物やお菓子がズラリ。暮らしの中の困りごとや楽しい話に花を咲かせながら、古瀬さんは最年長の村川さんの体調やメンバーの安否に気を配っているのだ。