『ブギウギ』趣里×水上恒司を支える多くの人々 小雪が語る“家族”であることの重要性
朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)第17週「ほんまに離れとうない」は、スズ子(趣里)と愛助(水上恒司)の結婚、愛助の入院、そしてスズ子の妊娠を巡り、様々な登場人物が東京~大阪間を行ったり来たりする週だった。 【写真】愛助(水上恒司)の服を見つめ思いを巡らすスズ子(趣里) その間には、スズ子と愛助が芦ノ湖の湖畔で一泊した箱根旅行もあったわけだが、週の月曜日と金曜日の放送で坂口(黒田有)と山下(近藤芳正)がそれぞれトミ(小雪)を説得しに村山興業の大阪本社へと足を運んでいることも印象的だ。 前者は結婚にはスズ子が歌手をやめるのが条件ということについて、後者はきちんと結婚してから子供を産みたいというスズ子の思いを伝えに。両者ともにスズ子と愛助の結婚を認めてほしいという思いは一緒だ。しかし、トミの態度は変わることはない。村山は社員や芸人はみんな家族。一致団結してきたからこそ、日本を代表する興業会社となった村山の今がある。だからこそ、愛助の伴侶になるべき人は、片手間ではなく、愛助を支え、村山を盛り立てていくことができる人。社長として、母として、村山を、愛助を愛するが故の頑なな思いだ。 第81話では、山下がトミを必死に説得するシーンが、アバンからタイトルバックを経て、回の中盤までおよそ7分半という長尺で描かれる。開口一番、時間がないと釘を刺すトミに対してこれだけの時間食い下がった山下からは、マネージャーという立場を超えた2人にとっての“父親”のような愛情も見え隠れする。 結婚の許しが出ていないにも関わらず子供ができたというのは順番がおかしいと、聞く耳を持たないトミに対して、山下はまだ愛助が幼い頃の思い出話を始める。愛助の生い立ちが透けて見えてくるのと同時に、トミと山下の長い付き合いが知れる会話だ。けれど、トミの方が一枚も二枚も上手であることは、すぐに言い負かされてしまう山下の表情から一目瞭然。けれど、怯むことなく、「もっと先の日本のエンターテインメントいうもんを考えとりますで」と愛助の壮大な夢を伝える山下の瞳は涙で輝いている。「一生の頼みや」と土下座をしても、トミの考えは変わらなかった。 「子供だけの問題やない。これは家族をどう考えるかの問題や。村山は家族や。家族はおんなじ方向を向いて頑張らなあかんのや」 スズ子がもらい子だったことを知る山下に、トミの言葉が重くのしかかる。それは山下もまた愛助やスズ子を息子、娘のように大切に思っているからこそ。演じる近藤芳正がコメントでも触れているが、趣里とは過去に『ハンチョウ~神南署安積班~』(TBS系)で親子役で共演をしており、実際に娘のように気にかけていたことも、今回の芝居に少なからず思いが乗っているのかもしれない。 愛助の手紙を預かって大阪から帰京した山下。愛助のモノマネ口調で手紙を音読する山下に、じっと思いを受け取るスズ子としかめっ面の坂口のシュールな構図に思わず笑ってしまう。思いやりの詰まった愛助の手紙に、スズ子は勇気づけられ、善一(草彅剛)の「ジャズカルメン」公演の話も進んでいく。 麻里(市川実和子)の紹介で向かった村西医院の医院長・村西(中川浩三)と看護婦長・東(友近)は、ともにスズ子の大ファン。「ジャズカルメン」の開催時期は妊娠6カ月目の安定期のため、出演しても問題ないと医師からの許可も降りた。「僕が全責任を持って、本番まで福来さんを診ます」という村西のセリフに、「診ます」ではなく「観ます」という本心も感じられなくもないが、それでもスズ子に寄り添ってくれる頼もしい医院であることに間違いはない。東がどさくさに紛れて、スズ子と握手をしている場面も見逃せない。 次週、身重のスズ子が魔性の女・カルメンを演じる舞台が幕を開けるが、大阪にいる愛助の病状は悪化していく。
渡辺彰浩