『ハンドレッドライン』メディア向けセッションリポート。小高和剛氏の実機プレイ解説でシミュレーションRPGパートの詳細が明らかに。敵をまとめてなぎ倒す爽快感のあるバトルを実現【TGS2024】
2024年9月29日、アニプレックスは東京ゲームショウ2024に合わせる形で『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』(ハンドレッドライン -最終防衛学園-)のメディア向けセッション“Behind Closed Door Session”を開催。登壇者は、本作のディレクション&シナリオを手掛けるTooKyoGames(トゥーキョーゲームス)の小高和剛氏と、プロデューサーを務めるアニプレックスの稲生舜太郎氏のふたり。 【記事の画像(30枚)を見る】 改めて本作は、アニプレックスから2025年4月24日に発売予定のNintendo Switch、PC(Steam)向けのアドベンチャーゲーム。謎の生物“SIREI”によって“最終防衛学園”に集められた15人の生徒が、迫り来る敵“侵校生”から学園を守る“極限”と“絶望”の100日戦争が描かれる。 今回のセッションではゲーム概要の説明が行われたほか、実機映像を交えての解説も実施。ほとんど情報がなかったシミュレーションRPGパートに関して明らかになった部分も多いので、ぜひ最後までチェックしてほしい。 冒頭のアニメシーンは20分もの大ボリューム! セッションは、小高氏の挨拶からスタート。「本作はトゥーキョーゲームスの総決算な作品で、弊社初の自社IP作品となっています。もうすぐマスターアップでして、発売延期はしません(笑)」と、小高氏らしい冗談を交えながら、開発が順調であることをアピールした。 アニプレックスの稲生氏(左)とトゥーキョーゲームスの小高氏(右)。 最初に披露されたのは、冒頭のアニメシーンをかいつまんで編集された映像だ。小高氏は「冒頭には20分くらいのアニメシーンを収録しています」と語り、こう続けた。 「トゥーキョーゲームスはゲームだけではなく、アニメやマンガも手掛けています。総決算である本作には、そういった要素も入れたいと考えました。少し長いかもしれませんが、アニメの第1話を観るような感覚で楽しんでいただけると思います」 冒頭のアニメシーンで描かれていたのは、主人公・澄野拓海の穏やかな日常生活。彼は東京団地と呼ばれる場所で暮らしていたが、小高氏によると「東京団地はドーム状のもので空が覆われている」という。 続けて、「拓海たちは何世代にもわたって東京団地で暮らしており、ここでの生活に違和感は抱いていません。拓海たちがこの街で暮らす理由は、物語を進めていくと明らかになります」と語った。 本作のアニメシーンは、小高氏が『超探偵事件簿 レインコード』を手掛けたときにタッグを組んだ、CG制作会社のジェットスタジオが担当している。小高氏は「僕らのことをよくわかってくれている方たちが制作してくれています」とコメント。 稲生氏も、「ジェットスタジオのプロデューサーの方とも、“作品全体のクオリティーを底上げするのはムービーシーンだよね”と話し合っていました。とくに、東京団地が炎に包まれるシーンは、一度作り上げた後にさらにブラッシュアップしています」と出来栄えに自信を見せていた。 また、披露された映像には、拓海たちに命令を下す最終防衛学園の司令官・SIREIと出会うシーンも収録されていた。SIREIの声は、ベテラン声優の大塚芳忠さんが担当することが判明したのだが、「(ボイスが)合っていますよね」という小高氏の感想に、筆者を含めて参加者の多くは納得した様子だった。 ちなみに、東京ゲームショウ2024のアニプレックスブースには、SIREIの等身大フィギュアが設置。横にある起動ボタンを押すとSIREIのダンディーな声を聴けるので、会場に足を運ぶ予定のある方はぜひ堪能してほしい。 さらに映像には、拓海が“我駆力刀”(がくりょくとう)を心臓に突き刺して、学生服を着た姿に初めて変身するシーンも。赤い血に包まれて衣装が変わる演出は、高田雅史氏が手掛けるクールな音楽と相まって、誰しもが持つ思春期の心が刺激されるものになっていた。 拓海たち生徒は、学生服のような姿で戦う。デザインがそれぞれ異なるのも印象的だ。 豊富なイラストと音楽がストーリーを盛り上げる“アドベンチャーパート” 映像の紹介が終わると、実機プレイでのゲーム解説へ。本作には、学園での生活を描いたアドベンチャーパートと、謎の敵“侵校生”と戦いをくり広げるシミュレーションRPGパートが収録されている。セッションでは、ふたつのパートの解説が行われた。 アドベンチャーパートは、気を失った拓海が教室で目覚めるシーンからスタート。小高氏が手掛けたとある作品を思わせる見覚えのある展開に、会場からは自然と笑いが起こっていた。 ストーリーは、3D背景に2Dのキャラクターを配置し、登場人物たちが会話をくり広げていく形で進行していく。シーンによってポートボイス(一部にしか音声が入っていないこと)とフルボイスを使いわけており、小高氏よると「重要なシーンやイラストが用意されたシーン、バトル中のイベントは、フルボイスになっています」とのこと。 また、キャラクターの表情パターンの種類が多いのも本作の特徴だ。小高氏は「キャラクターひとりあたり100種類近い表情パターンを用意していて、100種類を超えているキャラクターもいます」とアピール。小高氏が手掛けたこれまでの作品と比べても、「表情パターンは増えている」そうだ。 表情や音楽の演出づけは、シナリオの担当者がそれぞれ行っているそうで、小高氏もかなりの数を担当したそう。「物語に沿った演出ができていますし、表情や音楽が足りないと思ったときは、小松崎(小松崎類氏)や高田にすぐに用意してもらえる環境なので、リッチな作りになっています」と自信をのぞかせた。 今回、ひとクセもふたクセもある生徒たちの中から、今回は飴宮怠美(あめみや だるみ)、厄師寺猛丸(やくしじ たけまる)、雫原比留子(しずくはら ひるこ)が紹介された。 怠美は、デスゲームが好きなメンヘラ気質の女の子。家庭環境に恵まれなかったせいで、デスゲームに参加したいという願望を持っているらしい。 ヤンキーのような見た目の猛丸は、こう見えて女性や子ども、老人、動物にはやさしいそうで、小高氏は「なぜグレているのかわからない」とコメント。「いまどきあまり見ない、昭和っぽい感じのキャラクター」とも語っていた。 そして、比留子はドSな性格のキャラクター。“侵校生”との戦闘経験があるようで、生徒たちの中でも戦闘力が高いという。謎めいた存在ゆえに拓海たちは疑心暗鬼になることも。 ちなみに、ここで紹介された生徒たちのキャスティングはまだ発表されていないが、小高氏は「怠美と猛丸を演じてくれた方たちとは、今回初めていっしょに仕事をしました。15人の生徒の中で、半数以上の方たちは、僕らの作品に出演してもらったことがあります」とヒントをくれた。 生徒たちの自己紹介が終わると、SIREIが登場。生徒たちの体には爆弾が仕込まれており、“侵校生”との戦闘を強制されているといった、デスゲームのような要素もあるという。しかし、生徒の中には怖がって戦闘に参加しない者も……。最初はともに戦う仲間が少ないものの、物語が進むといっしょに戦ってくれる生徒が増えていくそうだ。 小高氏は本作のストーリーに関して、「基本はバトルモノですが、ミステリーやサスペンスといった要素もあり、やめどきがないまま進行していきます。学園で100日間を過ごすことになりますが、しょっちゅういろいろなトラブルが起きるので、退屈することなく進められると思います」とコメントした。 なお、アドベンチャーパートには自由に行動できる時間もあり、キャラクターを成長させたり、仲間と絆を深めたりすることも可能。物語の続きが気になる人は、自由行動を飛ばしてストーリーに集中するといったプレイもできるという。 爽快感を意識しつつ、戦略性のあるバトルも楽しめる“シミュレーションRPGパート” シミュレーションRPGパートの解説では、具体的なバトルの進めかたが判明。“侵校生”は “WAVE”ごとに出現し、拓海たちは学園にバリアを張る設備を守るためにそれらを撃退することになる。 小型の敵は機動力があったり、逆に大型の敵は機動力はないものの、攻撃力が高い、といった特徴がある。さらに、ステージによってはあらゆる方向から敵が攻めて来るため、どの敵を優先して狙うのか、臨機応変な立ち回りが要求される。 キャラクターの武器や制服は、自身の血が具現化したもの。キャラクターそれぞれで異なる武器を使って戦い、拓海は主人公らしくオールラウンダーで使いやすい、怠美は遠距離攻撃が得意、猛丸は移動力があってタンク役がこなせる、留子は攻撃範囲が狭いものの威力が高い、といった個性がある。 特徴的なのは、大群で攻めてくる“侵校生”に対して、複数の敵にまとめてダメージを与えられる範囲攻撃が多く用意されているところ。小高氏によると「一度の攻撃で多くの敵を巻き込めるかどうかが重要になる」という。 また、キャラクターを移動させてから攻撃するのではなく、攻撃を選んでからキャラクターを移動させて対象を選べるようになっているのもポイント。コマンドを選んだ段階で攻撃範囲が表示されるので、どこに移動させてどの敵を狙えばより多くの敵を巻き込めるのか、判断しやすいと感じた。 キャラクターの行動は、“AP”と呼ばれるポイントで管理されている。APが残っていれば同じキャラクターで連続して行動することも可能だが、一度行動したキャラクターは疲労状態になってしまう。疲労状態では、攻撃はできるものの、移動範囲が狭くなるので、別のキャラクターを行動させるといった仲間との連携が重要になりそうだ。 そして、APが尽きて行動ができなくなると、味方のターンが終了して敵のターンになる。APを残したままターンを終了することもできるので、あえてAPを温存してつぎのターンに備えるといった戦術も取れる。 敵を倒したり、ダメージを受けたり、仲間が戦闘不能になったりすると、画面上の“VOLTAGE”のゲージが溜まっていく。このゲージを消費することで、このバトル中にのみ発揮するバフが得られる。バフの内容としては、キャラクターの攻撃力を上げたり、カウンターなどがあり、どういったバフが使えるかも成長要素になっているようだ。 発動時にカットインが挿入される強力な必殺技も使用できるが、必殺技を使うとスタン状態になり、つぎのターンは行動不能になってしまう。さらに、瀕死状態のときは、命と引き換えにより強力な必殺技も発動可能。戦闘不能になった仲間は、いずれ復活させることができるとのこと。どのタイミングで、どのコマンドに“VOLTAGE”を使用するのか。プレイヤーの判断が重要になりそうだ。 シミュレーションRPGパートに関して小高氏は、「ストーリードリブンのゲームなので、難易度は低めにしています。考える要素もありますが、攻撃範囲にできるだけ多くの敵を倒すという爽快感を重視しました」とコメント。その言葉通り、小型のザコ敵は一撃でせん滅できるなど、全体的にバトルのテンポがいいと感じた。 なお、固有の名前がついている敵を倒すと、APが増えるという要素もある。小型の敵と比べると倒しにくいのだが、範囲攻撃に巻き込むなどして効率よく倒せれば、APを維持して攻め続けるといったことも可能に。一般的にシミュレーションRPGのバトルは長くなりがちだが、本作は短い時間で奥深いバトルが堪能できそうだ。 シミュレーションRPGパートでは、瀕死の状態に追い込まれることが多いようなのだが、これについては生徒たちが命を賭けて戦うということで、「あえて回復手段を少なくしている」とも。シミュレーションRPGを初めて遊ぶという人は不安に感じるかもしれないが、ゲームオーバーになると、ほぼ無敵状態で再挑戦できる救済策も用意しているとのことなので、心配はいらないだろう。 WAVEが進むとボスが登場したのだが、ボスはなぜか人のような姿をしており、理解不能な謎の言語を使用していた。学園を襲う“侵校生”の正体や目的が、ますます気になるところ。 このボスに関連した要素として、トドメを刺したキャラクターは敵の能力を吸収できる。誰をパワーアップさせるか、といった楽しみもあるようだ。 物語を盛り上げる要素としてシミュレーションRPGパートや独自のシステムが誕生 セッションの最後に、メディア合同による質疑応答を実施。作品に懸ける想いなどを改めてうかがった。 ――本作にシミュレーションRPGパートを導入した理由は?: 小高: シミュレーションRPGを作りたかったからこのゲームを作ったというよりは、物語の展開上、戦争をテーマにしていたので、シミュレーションRPGパートを導入しました。シミュレーションRPGパートは、あくまでも物語演出の一環になります。 そのことをメディア・ビジョンさん(本作の開発会社)に理解してもらったうえで、シナリオを盛り上げるための戦闘システムを組み立ててもらいました。ただ、バトルがおもしろいに越したことはないので、メディア・ビジョンさんにいろいろなシステムを考えてもらいました。 ――シミュレーションRPGが苦手な人に対して救済策を用意しているとのことでしたが、一方でうまくプレイした人に向けて、ご褒美のようなものはありますか? 小高: 戦闘の後に“BP”というポイントが手に入ります。このポイントを溜めることでキャラクターの成長要素につながったり、ギャラリーを開放したりすることができます。 ――仲間のキャラクターは、最大何人操作することができるのでしょうか? 小高: 最大16人です。厄師寺はバイクに乗って戦っていましたが、手に持つ武器だけではなくて、バラエティー豊かな武器を用意しています。 ――“VOLTAGE”の強化効果を、その戦闘中のみにした理由は? 小高: 本作はストーリードリブンのゲームです。いろいろなシステムを成長要素につなげてしまうと、物語の続きが見たいのにゲームを進められなくなってしまいますよね。キャラクターを成長させていなくても、一時的な強化システムでバトルを攻略できるように“VOLTAGE”を考えました。今回お見せしたのは能力を強化する“我駆力(がくりょく)アップ”だけでしたが、自由行動での成長要素で、反撃できるようにするなど、選べる効果を増やせます。 ――“VOLTAGE”は最大で何パーセントまで溜められますか? 小高: 300パーセントです。早い段階でキャラクターを強化しておくと後半のWAVEが楽になるので、溜めすぎないように消費しながら戦うのがオススメです。物語が進むと、300パーセントのゲージを使って発動する、ボムのような攻撃も使えるようになります。 ――回復手段が少ない、瀕死状態で命を犠牲に放つ必殺技があるなど、仲間が戦闘不能になることが前提のバランスなのかなと感じました。戦闘不能の仲間がいると、ストーリーの展開にも影響しそうですが……。 小高: キャラクターの生死は、ゲームを進めると登場する選択肢が影響していて、プレイヤーの選択によって生き残るキャラクターもいれば、死んでいくキャラクターもいます。 稲生: 選択肢が影響するのは、これまでに公開しているPVから想像はできるかと思いますが、戦闘中に死んだキャラクターはどうなっていくのかは、もうちょっと温めさせてください(笑)。 小高: ちなみに、マルチエンディングなのはこっそり伝えていますが、プレイヤーの選択によって生き残るキャラクターが変化するようにしたのは、『ダンガンロンパ』シリーズのときに、「キャラクターの死ぬ順番が変わるともっとおもしろいのに」であったり、「死ぬキャラクターを生き残らせる方法があればよかったのに」といった感想を多くいただいたからです。 『ダンガンロンパ』ではトリックの都合上、実現するのが難しかったので、本作でトライしました。 稲生: マルチエンディングは、打越さん(打越鋼太郎氏)が得意としているところです。小高さんと打越さんが組むことで、ファンの皆さんが期待していることが実現できていると思います。 ――マルチエンディングということで、チャプターセレクトなどの周回向けの機能はありますか?: 小高: もちろん用意しています。そのあたりのシステムは打越がディレクションをしていて、チャプタージャンプのような機能が利用できます。 ――100日間を過ごすということは、けっこうなボリュームになると期待しても大丈夫ですか? 小高: そうですね……。 稲生: ボリュームはすごいです、とだけ(笑)。 ――自由行動ではキャラクターたちとどのような交流が楽しめますか? 小高: 『ダンガンロンパ』シリーズのようなキャラクターどうしのやり取りは、本作にもあります。自由行動中は学園内にいるキャラクターと会話をすることができ、キャラクターの育成に使えるポイントが溜まっていきます。また、好感度イベントも用意していて、好感度を上げると絆がどんどん強くなりますが、やり込み要素なので、必ずしもプレイする必要はありません。 ――ファンや読者へのメッセージをお願いします。 小高: 初めての自社IP作品ということで、いつも以上に気合いを入れて作りました。その結果、たいへんなゲームになっていますが(苦笑)、コンプライアンスがきびしい中で、攻めた表現をしている、刺激的な内容になっています。実際にプレイしていただければ、頭を殴られたような衝撃があると思いますし、「よくこんなゲームを作ったな」と、わかってもらえるのではないでしょうか。 稲生: 小高さんたちがすべてをかけて本作を開発してきたのを、間近で見てきました。パブリッシャーがアニプレックスになって、丸くなったと小高さんたちのファンに言われないように、会社と相談しながらエッジの効いた作品に仕上げています。発売日までまだ時間はありますが、ギリギリまでブラッシュアップをしていきますので、ぜひご期待ください。 『ハンドレッドライン』関連記事