「野球人生で一番」 星稜の背番号18が初先発で完封 センバツ
◇センバツ高校野球準々決勝(28日、甲子園) ◇○星稜(石川)5―0阿南光(徳島)● 【熱戦を写真で】星稜-阿南光(準々決勝) 数ある選択肢の中で、誰を準々決勝の先発マウンドに上げるのか。星稜の山下智将(としまさ)監督の選択は「心身の状態が一番いい」という背番号「18」の戸田慶星(けいた)。2年生右腕が公式戦初先発で、監督も驚く快投を披露した。 初々しさとは裏腹に、マウンド度胸が抜群だった。細かなコースは気にせず、とにかくストライクゾーンへ投げ込んでいく。130キロ台中盤の直球はホームベース上で加速し、阿南光の各打者が振り遅れた。 六回は2死から3年生の三塁手・萩原獅士(れお)の悪送球で、二塁に進まれるピンチを迎えた。それでも「全然、大丈夫」と先輩に声をかける余裕があり、後続を打ち取った。被安打2、無四球、105球の完封劇に「(野球人生で)一番ですね」と笑った。 昨秋の明治神宮大会で32年ぶりの優勝の原動力になったのは、3年生左腕の佐宗翼と2年生右腕の道本想。昨秋の公式戦で両投手が9試合ずつ投げたのに対し、戸田の登板は北信越大会1試合の2イニングのみだった。 ライバルの存在が成長を促した。同じ星稜中出身で同学年の道本は当時もエースで「全然上でした」。さらに、昨秋の活躍で先に進まれた悔しさがあった。この冬、ウエートトレーニングと投げ込みに励んで球速は5キロ増の最速143キロに。その鍛えた直球が最大の持ち味となった。 春夏合わせて星稜を甲子園に25回導いた山下智茂元監督でもなしえなかったセンバツ初の4強入り。偉大な父を超えた山下監督は「私は小さい頃から星稜の野球を見てきたので、この壁っていうのはすごく意識があった。何か見えない、背中を押してくれるような力がある気がする」。盤石の体制で、初優勝も視野に入ってきた。【生野貴紀】