ラグビーコラム BL東京のリーグワン初制覇は「育てる文化」の勝利だった
【ノーサイドの精神】41人。のっけから何の数字かと思われたかもしれないが、実際、何だと思われますか。これ、リーグワンを初制覇したBL東京で、レギュラーシーズン、プレーオフ合わせて18試合に出場した選手の数。ちなみに決勝の相手だった埼玉は38人だった。 ゼネラルマネジャー(GM)就任3年目の薫田真広GMは、「トッド(ブラックアダー・ヘッドコーチ)が種をまいた」と表現した。PR木村星南(24)、HO原田衛(25)、PR小鍛治悠太(25)のFW第1列をはじめ、決勝で先発した27歳以下の選手は10人。そこにはBL東京が東芝府中時代から長年培ってきた、「育てる文化」というものがある。 薫田GMはリクルートについて「BL東京に合った選手を採ってくる」という。前述した10人もそうだろう。BL東京といえば、接点の強さ、武骨さというイメージ。体をぶつけることをいとわない選手が必然的に多くなる。それを如実に表したのが、FL佐々木剛だ。 大東大で主将を務めた27歳は、ターンオーバーにつながるようなドミネートタックルの回数が18回でリーグ5位。ちなみに1位が21回でFLシャノン・フリゼル、2位が20回でNO・8リーチ・マイケル、3位が19回でNO・8アーディー・サベアとLOジェイコブ・ピアース。神戸のサベア以外はみんなBL東京の選手だが、佐々木はベスト10でただ一人の日本人選手にもなった。 日本人選手はもちろんだが、外国人選手についても「チームのプランに対してアジャストしてもらう」という方針。優勝に多大な貢献をしたFLシャノン・フリゼル、SOリッチー・モウンガのニュージーランド代表2人にも、そのアプローチは変わらなかった。「大事なのはチームの軸というもの」と薫田GM。カテゴリーC(他国代表歴を持つ選手。1試合で登録3人までという制限がある)の選手はこれまでも在籍したが、バリバリの現役代表で加入したのはフリゼルとモウンガがチーム初だったという。2人は昨秋のW杯で準優勝に終わったとき、「悔しさをBL東京で勝って晴らそう」と誓い合ったというから、BL東京が求める「チームマン」の素養は十分にあったといえる。 BL東京の親会社である東芝は、来年7月で創業150年を迎える。頂点に立つという至上命令を1年前倒しで実現できたが、薫田GMは「育てる文化を継続していきたい」と言う。今後ラグビーはいっそうプロ化が進み、選手の移籍も増えるだろうし、〝引き抜き〟のような事象も出てくるかもしれない。「育てたものへのアドバンテージも必要になってくると思う」。育てることの価値を知る薫田GMの提言でもある。(田中浩)