オリンパス社長が違法薬物で辞任 事実上の“解任”に既視感…13年前にもドロドロの権力争い【経済ニュースの核心】
【経済ニュースの核心】 「2011年の粉飾の立て直しを巡る人事の混乱がまだ尾を引いているような不祥事です。今回も一種のクーデターのように思えてなりません」 【写真】オリンパスに居座る菊川剛会長を許した”日本の静かな株主たち”(佐高信) 大手信用情報機関幹部がこう指摘するのは、精密機器メーカー「オリンパス」のシュテファン・カウフマン社長兼CEO(56)が、10月28日付で事実上解任されたことだ。カウフマン氏が違法薬物を購入していたという通報を受けて、会社が内部調査を行った結果、取締役会が辞任するよう求め、本人が応じたとされる。辞任を受けて、当面、竹内康雄会長がCEOの業務を担い、後任については会社の指名委員会で検討していくというが……。 発端は9月末ごろ、オリンパスから「シュテファン・カウフマン社長兼CEOが違法薬物を購入している疑いがある」という相談が警視庁に寄せられたとされる。「週刊文春」の独自取材によると、情報源は薬物の売人だった。 カウフマン氏はドイツ企業の人事部門などを経て、2003年にヨーロッパのオリンパスグループ会社に入社。本社で経営戦略の統括役員などに就いた後、昨年4月に社長兼CEOに就いたばかりだった。有価証券報告書によると、昨年度、カウフマン氏は11億3800万円の報酬を得ている。 実は、今回の解任劇には既視感がある。オリンパスを巡っては、2011年10月、当時のマイケル・ウッドフォード社長が突然、解任された過去がある。会社側は解任理由について「経営の進め方が独断的なため」と発表したが、実際は、ウッドフォード氏が、過去の企業買収をめぐる経理上の疑惑を調査し、君臨していた菊川剛会長と副社長であった森久志氏の引責辞任を迫ったことにあった。ところが直後に開かれた取締役会議で、ウッドフォード氏は逆に社長職を解任されてしまう。後任社長には菊川氏が会長兼務で就任した。 これに対して、ウッドフォード氏は事の経緯を一部マスコミに暴露し、その異常な企業買収と会計処理の実態が明らかになる。損失額は1000億円を超えるものだった。オリンパスはバブル崩壊時に出した多額の損失を隠すために、実態とかけ離れた高額による企業買収を行い、それを投資失敗による特別損失として処理していたのだ。歴代の会社首脳は「粉飾」を知りつつ公表していなかったことを公式に認めた。菊川氏も辞任に追い込まれた。 今回、違法薬物購入疑惑で辞任したカウフマン氏はウッドフォード氏以来の外国人トップで、売り上げの8割超を占める医療事業など「グローバル・メドテックカンパニー」を牽引してきた。社長に就任してまもない時期に解任される事態もまさに相似形だ。 オリンパスの業績は好調そのもの。だが、「業績が好調な時ほど、内部の権力争いは熾烈になりやすい。外国人トップであればなおさらだ」(メガバンク幹部)との見方もある。 (小林佳樹/金融ジャーナリスト)