イランの報復攻撃、イスラエルとの対立は「新たな段階」に突入と専門家 攻撃自体は「一種のパフォーマンス」
バイデン米大統領をはじめG7首脳は14日、イランによるイスラエル攻撃を非難「制御不能なエスカレーション」を引き起こす危険があると警告した。 米政府当局者によるとバイデン氏は、イランがイスラエル領内にミサイルや無人機による攻撃を行ったことを受けて、イスラエルのネタニヤフ首相に対し、イスラエルが報復を決めても米国は参加しないと警告した。 一方、ネタニヤフ首相はテルアビブで戦時閣僚会議を行い、イランの攻撃への対応を協議した。戦時内閣に参加するガンツ元国防相は、イスラエルは「我々にとって適切な方法とタイミングで、イランに代償を要求する」と警告した。 イラン軍総司令官は作戦は成功だとしたうえで、「この問題は終結したとみなす」と述べた。その一方でイスラエルと米国が今回の攻撃に報復すれば、はるかに大きな反撃に出るだろうと警告した。 イスラエル軍は14日に、戦闘機がイランから発射された無人機と巡航ミサイルを迎撃する様子を映した映像を公開した。300発以上のミサイルと無人機は大半がイラン国内から発射された。 だが米英とヨルダンの協力もあり、ほとんどが撃墜されたため、イスラエルに与えた被害はわずかだった。イスラエル南部の空軍基地は被弾したが、通常通り運用されている。落下した破片で7歳の子供が重傷を負ったが、そのほかに人的被害は報告されていない。 被害は最小限にとどまったものの、専門家はイランとイスラエルの対立は新たな段階に入ったと指摘する。 スティムソンセンター バーバラ・スラビン中東特別研究員 「イスラエルとイランの“影の戦争”は、いまや公然のものとなった。 ただしイランはそれを非常に計算された方法で行い、無人機をゆっくりと低空でイランからイスラエルへ長時間にわたって飛行させ、イスラエルや米国などに準備の時間を十分に与えた。ヨルダンでさえ領空を通過したドローンの多くを撃墜した。 死者が出なかったのは幸いだ。大きな被害もなかったようだ。これは一種のパフォーマンスだ。 それでもこれで新たな段階に入った。イスラエルによるイラン当局者への攻撃に対して、イランがイスラエルへ直接攻撃を行ったのだから」 イランの攻撃は、革命防衛隊幹部が死亡したイスラエルによるとみられる在シリア大使館攻撃への報復だった。またガザでの戦闘を発端に、地域の親イラン武装組織とイスラエルとの間で衝突が数カ月にわたり続いていた。 イランとイスラエルの全面戦争が勃発し、米国もそれに参戦するという恐れが、地域を緊張させた。 ロシア、中国、仏、独をはじめとする主要国や、アラブ諸国のエジプト、カタール、アラブ首長国連邦からも、自制を求める声が上がった。またトルコもイランに対し、地域のさらなる緊張を望んでいないと警告した。