103万円の壁に立ちはだかった〝ラスボス〟自民・宮沢洋一税調会長 攻略法は「論破」か
国民民主党が求めた所得税が生じる「年収103万円の壁」の178万円への引き上げは、自民、公明両党との妥結点を見いだせず、来年以降の継続協議が決まった。立ちはだかったのは、税制の事実上の決定権限を握る自民党の宮沢洋一税制調査会長だ。税制に精通した東大卒の元財務官僚で、親族に元首相もいる〝華麗なる宮沢一族〟の一人。減税政策に慎重な緊縮財政派として知られ、SNS上では103万円の壁を守る「ラスボス(最後の敵)」とも呼ばれた人物だ。 【写真】〝華麗なる宮沢一族〟。伯父は宮沢喜一元首相 ■「税は基本的に理屈の世界だ」 「そういう(国民民主のSNS戦略などの)動きに対抗する働きかけは、これからしていかないといけない。ただ、税というものは基本的に理屈の世界であり、しっかりとした理屈を伴ったものでなければいけないのも事実だ」 宮沢氏は、来年度の与党税制改正大綱が決定した20日の記者会見でこう述べ、改めて税制を改正する上での理屈の重要性を強調した。抑揚をつけずに淡々と話す〝宮沢節〟はこの日も健在。減税に慎重姿勢を貫く宮沢氏に対し、SNS上では批判の声があふれるが、「そうした声やマスコミ評などを気にせず、黙々と自分の仕事をする人」(与党税調幹部)のようだ。 ある財務省幹部は、「宮沢さんが感情的になって話をするところを見たことがない。他の議員だと1~2時間かかる政策打ち合わせが、宮沢さんの場合は10分ほどで終わる。圧倒的な知識と経験があり、極めて論理的に物事を分析する」と評価する。 この幹部は、今回の103万円の壁を巡る協議でも、「国民民主は2手先までしか読めていないが、宮沢さんは5手先くらいまで先読みしている」と分析する。政府・与党は少数与党の現状や、今後の野党と国民民主との関係性が変節する可能性も計算し、年収の壁の協議を〝期限を明記せず〟継続することが与党、財務省の観点で最良と判断したとみられる。 ■叔父は元首相、いとこは前首相 改めて宮沢氏の経歴を振り返る。父・弘氏は法相や広島県知事を務めた。伯父は宮沢喜一元首相。母は岸田文雄前首相の叔母で、岸田氏はいとこにあたる。