予想外のラストに騒然…ドラマ『オクラ~迷宮入り事件捜査~』が見応えのある”考察ドラマ”になったワケ。最終話レビュー
飛鷹と不破の見事な連携プレー
後半では、愁(観月ありさ)を狙撃した人物、そして首都爆破テロを目論む真犯人が「オクラ」室長の幾多(橋本じゅん)であると発覚する。目的は、“国の秩序を守るため”。時効制度を撤廃させるため、わざと未解決事件を増やして時効を乱立させたこともあった。今回のテロ事件も国民に防衛費増額の法改正を支持させるため、身をもってテロの脅威を知らしめようとしていたのだ。 「未来を見据えて多くの命を救う」一見正義にもみえるがそれには多くの犠牲が必要であり、飛鷹の言うように自分を正当化したいだけの偽の正義でしかない。罪を罪と思えるか否か。幾多自身も過ちに気づいているのかもしれないが、引き返すにはあまりにも闇に染まりすぎてしまったのだろう。 窮地に陥る飛鷹を助けに来たのは、バディの不破だった。連係プレーで「オクラ」内にあった爆弾の解除に成功するが、それとは別に不破には果たさなければならないことがあった。 第2話で放った「あなたが自分の正義に背いたその時は 容赦なく引き金を引く」の言葉を回収するように、不破は飛鷹の身体に銃弾を撃ち込むのだったー。
見ごたえのある“考察ドラマ”『オクラ』
王道刑事ドラマかと思いきや、ダークな展開に振り切った『オクラ~迷宮入り事件捜査~』。 9年ぶりに復活した“火9”にふさわしい挑戦的で枠にとらわれない脚本が、視聴者をぐいぐいと物語に引き込んでくれた。予想の隙間をスルスルとすり抜けていく裏切り展開は毎話驚きに満ちていて、“考察ドラマ”としても至極の見応えとなったことだろう。 また、反町隆史と杉野遥亮の“凸凹バディ”が回を追うごとに絆を深めていく関係性の変化も心地がよかった。円熟味のある演技で魅せた反町と、クールながらも熱さをもった不破をごく自然な演技で表現した杉野。 クランクアップで反町は「体当たりで一緒に付いてきてくれる姿が本当にうれしかった」、杉野は「思いやりや愛情をたくさんいただきました」とそれぞれがコメントしたように、最終話の飛鷹と不破には2人の良好な関係性がそのまま反映されたようなエモさがあった。 個性豊かな「オクラ」のメンバーも愛すべきキャラクター。シリアスな展開にパッと火の灯るような明るさをもたらしてくれたのは、いつも「オクラ」のメンバーだったように思う。物語は続きが期待されるラストで終幕した。劇場か、続編か…願わくば、「オクラ」たちにまた会いたい。 【著者プロフィール:西本沙織】 1992年生まれ、広島在住のライター。会社員として働くかたわら、Web媒体でエンタメに関するコラムやレビュー記事の執筆を行っている。ドラマや映画、マンガなどのエンタメが好き。
西本沙織