人気絵本の「ばばばあちゃん」のようにパワフル 「まだまだ活躍してほしかった」絵本作家・さとうわきこさんの急逝を悼む声
■長野県で「小さな絵本美術館」を主宰
絵本作家のさとうわきこ(本名武井和貴子=たけい・わきこ)さんが3月28日、長野県諏訪市の病院で死去した。89歳。人気絵本シリーズ「ばばばあちゃん」などで知られ、岡谷市と原村で「小さな絵本美術館」を主宰したさとうさんは、亡くなった日も普段と変わりなく過ごしていたという。8日、関係者から絵本作家の急逝を悼む声が上がった。 【写真】さとうわきこさん、「ばばばあちゃん」が活躍する絵本を手に
さとうさんは亡くなった3月28日、原村の小さな絵本美術館八ケ岳館に出向いた。スイスの絵本作家の原画などを常設展示するスペースを増築中で、7月の新装オープンを楽しみにしていたという。
■気さくで「褒め上手」な姿が印象に
美術館を運営する一般財団法人理事の矢崎明子さん(55)=諏訪市=によると、さとうさんは普段、岡谷市の本館近くの自宅2階アトリエで創作。周辺のリンゴ畑からヒントを得た作品(「いたずらからす―ばばばあちゃんのおはなし」)もある。
矢崎さんは八ケ岳館に泊まり込んで親子で工作などをする「お泊まり美術館」に参加した際、さとうさんの気さくで「褒め上手」な姿が印象に残っている。「子どもにも『いいじゃない、まねしちゃおうかな』と言い、全然偉ぶるところがなかった」
八ケ岳館学芸員の鮎沢葵さん(34)も、さとうさんが亡くなった日に一緒に仕事をした一人。「いつもと変わらず朗らかで『重いものは持つわよ』と気にかけてくれた。翌日電話で訃報を知った時は信じられなかった」と話す。
■「とにかく明るくユーモアのある人だった」
八ケ岳館の近所に住み、美術館の展示などを手伝った小田寿一さん(64)は「美術館の森でクリスマスローズを丁寧に手入れしていたのを覚えている。絵本好きなら皆知っている作家さんで、とにかく明るくユーモアのある人だった」と振り返った。
学生とともにさとうさんと交流し、研究を進めた信州豊南短大(辰野町)教授の田中愛(ゆき)さんは「小さな体だったけれど『ばばばあちゃん』のようにパワフルな方だった。学生の質問にも気さくに楽しそうに答えてくれた。とても残念です」と話していた。