【中山記念】実力拮抗のメンバー構成 復活の兆し見せるソーヴァリアントが本命候補
Aコース替わり2日目で追い込みは届きにくい
過去10年でかなりのスローペースが2回。一方、相当なハイペースも1回。中山芝1800mはスタート後すぐに急坂を上がるため、基本的にペースが上がりにくいが、パンサラッサのような何が何でも逃げたいタフな馬が出走している場合にはハイペースになることもある。今年もテーオーシリウスが逃げるとなるとハイペースになる可能性が高い。 【中山記念2024 データ分析】3枠より内が特定条件クリアで単勝回収率241%! 脚質別成績などデータで徹底分析(SPAIA) また、脚質傾向は過去10年で逃げ1勝、先行5勝、中団3勝、差し1勝、追込はゼロ。逃げ馬の3着以内の割合が40%と中距離重賞としてはかなり高い一方、追込馬の3着以内は2016年のアンビシャスの2着のみ。3着以内の75%以上が中団より前なので、それら脚質の馬を中心にするのがベストだ。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 エルトンバローズ】 昨夏のラジオNIKKEI賞で3連勝を達成し、休養明けで挑んだ毎日王冠でも大接戦を制して優勝した馬。同レースでは6番枠から五分のスタートを切って好位の最内を追走。道中は前のエエヤンが外に行ったので、スペースを作って3列目。3~4角で最内から徐々に2列目に上がり、直線序盤では先頭のウインカーネリアンの直後まで上がるも進路がなくなってしまう。しかし、その外から窮屈な間を割って伸び、ラスト2Fで先頭列。ラスト1Fでもしぶとく粘り、3頭での大接戦をハナ差で制した。 前走のマイルCSは毎日王冠で好走した反動が懸念されたが、4着に善戦。前走は連続開催15日目でタフな馬場。前半3Fが34秒3と速く、4F目(3~4角の下り坂)で一気に減速する展開。また4着という結果は、馬場の内側が悪化して、中~外差し有利の馬場を中団外から差してのものではあったが、大崩れしなかったことは、昨秋からの成長が顕著であることを示している。エルトンバローズは成長期の4歳馬で能力が高い。今回は始動戦で目標は先かもしれないが、警戒が必要な一頭だ。 【能力値2位 レッドモンレーヴ】 前々走の富士Sの2着馬。9番枠からやや出遅れ、二の脚もひと息で、促しても後方に下がってしまう形。レースが緩みなく流れ、後方2列目の外から動けないまま3~4角を回り、直線序盤で前のソーヴァリアントの後ろから外へ誘導すると、ラスト2Fで同馬を捉えて2列目付近。ラスト1Fで1馬身半ほど抜けていたナミュールに唯一食らいついたが、差は詰まらず1馬身1/4差だった。 しかし、勝ち馬ナミュールは次走のマイルCSも優勝しているように、それなりにレベルが高かった一戦。3着ソーヴァリアントには2馬身半差としっかり差をつけている。 レッドモンレーヴは4走前の芝1400mの京王杯SCで初重賞制覇を達成、富士Sでも2着と好走しており、芝1600mよりも短い距離と長い距離のどちらが良いかと問われれば前者だろう。 ただ、3~4角で一気にペースが上がった5走前のダービー卿CTでは、後方外々から4角で6~7頭分外を回るロスがありながらも最後までしぶとく伸び続け、4着争いに加わったようにエンジンがかかってからがしぶといタイプ。このレースではペースが上がると判断し後方で待機した鞍上の判断が裏目となり、4角で手痛いロスがありながらもメンバー最速の上がり3Fタイムを記録している。 このことから芝1800mも悪くないと見ており、高速馬場ならばよりがんばれるだろう。今回は1回中山Cコース使用からAコース替わり2日目で、雨が降ってもそれなりの高速馬場となることが想定され、内枠も好ましい。スタミナが不足しがちな休養明けで1Fの距離延長となる点はマイナスだが、こちらも警戒が必要な馬だ。 【能力値3位 マテンロウスカイ】 昨年5月のオープン競走のメイSで、後の東京新聞杯・覇者サクラトゥジュールの2着と好走した馬。同レースでは8番枠からまずまずのスタートだったが、二の脚でドーブネなど内外の各馬を楽に制してハナを主張。淡々と緩みないペースで逃げて、3角では2番手以下に4馬身差。3~4角でやや息を入れ、後続の仕掛けを待って2馬身差のリードで直線へ。序盤で後続を離しにかかったが、内から捌いたサクラトゥジュールに食らいつかれ、ゴール寸前でクビ差捉えられた。 しかし、3着馬には3馬身差をつけており、重賞でも勝ち負けになる指数を記録していた。このことから東京新聞杯の当コラムではサクラトゥジュールを穴馬に推し見事に1着。一方のマテンロウスカイはサクラトゥジュールとおよそ1馬身3/4差の5着だった。メイSではサクラトゥジュールとクビ差だったのに、前走ではなぜ着差が開いてしまったのかというと、サクラトゥジュールが上手く中団内々を立ち回れたというのもあるが、マテンロウスカイが前の位置を取れなかったことが主な理由だろう。 本馬は末脚がそこまで速くないので、ある程度、前の位置を取る必要がある。前々走のリステッド競走リゲルSのように、マイル戦でも前半が遅ければ2列目の外と、前の位置が取れるが、東京新聞杯のように前半がある程度速いと2列目まで持っていくのが難しい。この馬にとって芝1600mは忙しく、芝1800mへの距離延長はプラスだろう。 今回は何が何でも逃げたいテーオーシリウスが出走するが、メイSでのドーブネとの比較からある程度、前の位置を取って行けるはず。当時はドーブネが外枠でマテンロウスカイのほうが内枠。今回は枠の並びが逆で、2列目の外という隊列にはなるかもしれないが、本馬にとって理想的な位置は取れるはず。ただ、テーオーシリウスを追い駆けすぎると危ういものがある。前に行って展開に恵まれればチャンスありという評価になる。 【能力値4位 イルーシヴパンサー】 一昨年の東京新聞杯を優勝し、昨年の京都金杯で重賞2勝目を挙げた馬。一昨年の東京新聞杯は11番枠から出遅れて後方2番手を追走。3~4角でも前がペースを緩めない中、後方の内目を通し、4角で外目に誘導して直線へ。序盤でジリジリと伸び、ラスト2Fで一気に先頭に立つと、ラスト1Fで後続を1馬身3/4突き放して完勝した。 この走りが評価されたのか、次走の安田記念では1番人気に支持されたが、東京新聞杯は先行馬総壊滅の流れを、後方から3~4角でロスなく立ち回って差し切る、あまり内容のないものだった。その後、昨年の京都金杯では7番枠から五分のスタートを切って中団馬群の内目に入れて追走。イルーシヴパンサーとしては位置を取りに行き過ぎたような感があったが、最後の直線で進路が開いてくれたこともあり、半馬身差で勝利した。 京都金杯後となる昨年の中山記念では8着。3番枠からまずまずのスタートを切って、押しての先行争いに加わり、最終的には好位の中目を追走する形。道中は3列目の内目で前にスペースを作ってレースを進め、3~4角では前のダノンザキッドの外から2列目の内まで上がって直線へ。ただ序盤で進路がなく、最内約1頭分のスペースをシュネルマイスターと奪い合い。動き出しがシュネルマイスターの方が速く、差し色も良かったために、この奪い合いに敗れて最後は甘くなった。 このレースでは前の位置を取りに行ったこと、最後の直線で最内を取りに行くのに脚を使ったことを考えると、勝ち馬と0.5秒差は悪くないが、この中山記念は例年と比べると凡戦で、昨秋の毎日王冠を下回るもの。突き詰めると、やはり本馬は前半をゆったりと走らせて、後半に特化させてこその馬と言える。前走のマイルCSも緩みない流れと、中~外差し有利の馬場を生かしての大外一気で勝ち馬と0.3秒差6着だった。 しかし、中山記念は追い込み馬不振の歴史があり、あまり後ろから行ったのでは届かない可能性が高い。かといって位置を取りに行ったのでは終いが甘くなる。テーオーシリウスがよほどペースを引き上げてくれないと苦しい戦いになるだろう。 【能力値5位 ソールオリエンス】 デビューから3連勝で皐月賞を制した素質馬だが、昨秋はやや成長を欠く結果となった。それでも3走前のセントライト記念では2着。14番枠から出遅れたが、そこからコントロールして中団外目を追走。道中はやや流れが遅く、ペースが上がった3~4角でじわっと動いて行く。ただそこでの反応が甘く、4角で置かれて直線へ。そこからジリジリ伸びて好位列まで上がり、ラスト1Fで先頭のレーベンスティールと3馬身ほどあった差を、1馬身3/4差まで詰めてゴールした。 ソールオリエンスはここでもデビュー2戦目で見せたコーナリングの下手さを見せてしまい、最後の直線で挽回しての好走。重賞通用レベルの馬は4角で楽に上がってこられるものだが、本馬はそれができておらず、前走の有馬記念でも4角で動けていない。皐月賞時のようにズブズブな馬場ならば、直線一気に賭ける競馬でも通用するが、勝ち負けするには位置を取っていく必要がある高速馬場での中山芝の内枠は向かない。包まれてしまう危険性があるからだ。ただ、前走の有馬記念で最後に伸びを欠いたことから、距離が短くなるのは良さそうだ。