「僕らはテセウスの船だなと思う」ジャンルレスバンド・odolの個性を探る
odolの音楽は誰かに聴かれることでしか意味がない
──odolはライブでもその時々にあわせてアレンジを変化させるようですが、すごく労力がいることだとも思います。なぜそこまでして変化に向き合うのでしょうか? 森山:それをやることで楽しめるので。過去のアレンジの演奏に対して「これちょっとなぁ」みたいな思いを抱えながらライブをするのでは意味がない。僕らのモチベーションの根源は「お金儲けしたい」ではなく「楽しいからやっている」。それが損なわれるようなことはしたくない。だから大変でもやらなきゃいけないことはあるし、それを経ることでライブがちゃんと楽しめると思います。 ──その変化を躊躇しないという部分に関して、誰かに影響を受けたとかはありますか? 森山:誰かというわけではないですが、僕たちは音楽を相対的なものだと思っていて。僕らは広い意味でポップミュージックをやっているという自覚がある。それは、誰かに聴かれるところにしか意味がない音楽を作っているから。 例えば交響曲や現代音楽のなかには、構造美やモチーフの使い方の美しさ、もしくはコンセプト自体など、その作品だけで存在意義が完結している音楽もあると思います。しかし僕たちは何かを生み出した瞬間のうれしさはあるが、それだけでは目的は達成していない。誰か一人でも聴いて、その人が何かを考えて、想像した瞬間に音楽として完成する。そういう意味で僕らの音楽はポピュラーミュージックだと思います。 そしてそういう音楽は社会、時代、文脈、さらにミクロな話だとメロディーがどんなコードに乗るかや、どんな伴奏に乗るかによっても聴こえ方が変わる。それが前提にあるから、時代や自分たちのムードが変われば、表現を変化させていくのは当然あっていいって思ってはいます。 ──最後に、今後odolとしてはどういう歩みを続けていきたいですか? ミゾベ:「常に変化を受け入れていく」と言っていただけたじゃないですか。変わり続けていることは、単純に変容しているわけではなくて、アップデートしているという気持ちがある。だからバンドや音楽を続けていくためにも、これからもアップデートしていきたいなとは思っています。 森山:僕もそこには共感する。「続けるために何をするのか」というのを考えることは重要。たとえば何か壁にぶつかっても、バンドを続けたいと思えば、次に成長するための糧にしようという気持ちにもなれる。10年目以降も、その心構えは持ち続けたいと思います。 ◇ アルバム『DISTANCES』を携えたワンマンライブを開催するodol。2024年3月31日に大阪「心斎橋LIVE HOUSE ANIMA」、4月20日に東京「下北沢ADRIFT」でおこなわれる。チケットは1月27日から発売。