能登半島から学ぶ〝次の災害から命を守る”ために応援職員が伝えたいこと
防災グッズは「備えているだけ」では使えない
佐々木さんは珠洲市役所に設置された簡易トイレで、ある親子の姿を見かけたと言います。 「子どもがぐずって泣いていたんです。『こんなトイレじゃできない』と」 そこに設置されていたのは和式トイレでした。母親が使い方を教えるものの、和式を利用したことのない子どもにとっては難しかったようです。 珠洲市の教育長からも「トイレの洋式化が進み、和式トイレを利用したことがない子どもが多いためトイレカーがあるなら提供してほしい」と同じような相談を受けたということです。 この相談を受け、愛媛県内で調整し、八幡浜市から珠洲市の直小学校にトイレカーが派遣されることになったと話します。 佐々木さんは、この珠洲市での状況を見て、例え防災グッズを備えていたり、行政から物資を配ったりしたとしても、普段使ったことのないものを、災害時になったからといって、いきなり使うことは難しいと指摘します。 トイレだけではありません。防災食も同じで、味が合わなかったり、アレルギーがあったりと日頃から試していないと、いざという時に食べられないという恐れもあるのです。 避難グッズを持っていても使えるかどうかは別の問題。 ▼備えているものを実際に使ってみて使い方を知っておく、自分に合うかを確認しておく。 ▼ローリングストックで、できるだけ日常の延長で備えを進めておく ▼平時でも災害時でも使えるフェーズフリーグッズを備えておく 避難生活で苦労しないよう、平時に行動を起こしておきたいポイントです。
「逃げる」という 何よりも大事な 命を守るための行動
佐々木さん:「能登半島地震では、思ったよりも津波の人的被害は出ていない。実際みなさんが高台に逃げているということ。逃げるという行為ほど、命を守るのに有効な避難方法はない」 「逃げる」ということは簡単なように思えますが、実際に災害時に行動するのは難しいことです。正常性バイアスなどの要因から避難をしない、ためらう人もいます。 東日本大震災でも愛媛県の第一陣として、宮城県の避難所に応援に入った佐々木さんは、「津波は何も残してくれない。思い出すらも。津波が引いても亡くなった人を探すことすらできない」と津波による死の悲惨さに触れながら、県民の避難の準備を呼び掛けます。 【日頃から津波避難で確認してほしいこと】 ▼どこに逃げるのか、逃げるのにどのくらい時間がかかるのか把握する ▼土砂崩れや倒壊家屋で避難路が塞がっていることもあるため複数の避難場所を確認しておく ▼避難路を塞がないよう、自分の家も社会インフラのひとつだという意識で耐震化をしてほしい ▼避難で持っていくものや、バラバラに逃げてもどこに集合するか家族や地域で話し合っておく ▼いつどこで起こるかわからない。夜間の避難経路なども確認を 愛媛県の想定では南海トラフ巨大地震で県内では最大 約1万6000人が亡くなるとされていて、被害を少しでも減らすためには、ひとりひとりが行動に移すことが求められます。 佐々木さん:「地域がやる気になれば、自分がやる気になれば事前の準備は誰にでもできる。備えを我が事として今日から出いいので少しずつ前に進めてほしい」