「嘘解きレトリック」は“異色の月9” セットは豪華でもキャストと脚本は…
テレビ本来に姿に
「雰囲気がいいからボーッと見ていられますが、嘘解きのトリックのレベルが高くないことが視聴率が伸びない原因の一つでしょう。同じ月9でも、22年1月期の『ミステリと言う勿れ』(主演・菅田将暉)ほどのレベルであれば話題にもなり、新たな視聴者を獲得していくこともできます。1・5倍速で見るほどのストーリーでもない。初回では二人が殺人犯の逮捕に繋がる活躍はしたものの、事件の“嘘解き”はありませんでしたし」 ストーリーだけの問題ではないという。 「やはりセットやロケ、小道具にお金がかかっている分、キャストにお金がかかっていないように見えます。鈴鹿はGP(ゴールデン・プライム)帯の連ドラは初主演ですし、松本も連ドラの主演がそれほど多いわけではありません。鈴鹿は前々作の『366日』に主演した広瀬アリスと同じ事務所ですし、松本は前作『海のはじまり』のヒロイン・有村架純と同じ事務所というところも、お金をかけてないなと思わせてしまう」 松本が演じる“鹿乃子”は、18年7月期の日曜劇場「この世界の片隅に」(TBS)で彼女が演じた“すず”に通じる雰囲気がある。 「松本の出世作ですが、このドラマはこうの史代さんの原作漫画が名作であり、11年には日本テレビが単発でドラマ化(主演・北川景子)、16年にアニメ映画(主役の声・のん)も大ヒットした後の連ドラ化だったことが大きかったと思います。そして、彼女がこれを超える作品に出会えていないところが、正直言って気の毒なところです」 脇役にも難があるという。 「脇を固める役者も、居酒屋の主人の大倉孝二(50)や八百屋の今野浩喜(45)といった味のある役者はいますが、大物がいません。せいぜい杉本哲太(59)と若村麻由美(57)くらいです。脚本家も無名と言っていい。演出陣には『東京ラブストーリー』や『ひとつ屋根の下』などで有名な永山耕三さんが加わっていますが、フジの役員待遇ですから演出料もタダです。なんだか、フジもこんなものだろうと諦めてしまっているように思えてしまいます」 なぜそんなことに? 「フジに限った話ではないのですが、キャストの豪華さや作品の密度では、もはやテレビドラマはNetflixに勝てないという意識が広がっているように思います。その昔、映画に対抗して『タダで暇つぶしに見ていただけたら』というテレビ本来の姿に戻ってしまったのかもしれません」
デイリー新潮編集部
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