「ココナッツディスク吉祥寺店」の店頭に並ぶ8センチCD=2024年9月6日午後4時49分、東京都武蔵野市、細川卓撮影

　大滝詠一の「幸せな結末」、ユニコーンの「働く男」――。東京都武蔵野市のレコードショップ「ココナッツディスク吉祥寺店」では昨年、店頭の一番目立つ場所に8センチCDコーナーを設けた。店主の矢島和義さんは「3年ほど前から問い合わせや購入する人が増えてきた」と話す。20～30代の若い世代が買っていくことも増えているという。 【写真】思い出の一枚があるかも？1万5千枚以上の短冊CDを集める男性のコレクションの一部 　ミリオンセラーが続出した1990年代、音楽市場を席巻したのは、最長でも約22分しか収録できない8センチCDだった。そのパッケージの形状から「短冊CD」とも呼ばれる円盤がいま、再び注目を集めている。 　日本レコード協会によると、日本で最初に8センチCDが発売されたのは1988年。2000年ごろから直径12センチのマキシシングルへ移行していき、サブスクの隆盛を経て、市場から姿を消していった。発売されたタイトルは15万以上ともいわれ、全盛期の1997年には年間1億6800万枚が生産された。 　2021年には年間生産数が9千枚まで落ち込んだ8センチCDだが、再生産の動きが出てきた。CD製作を手がける「こだわりのCDプレス プレスミー」は2022年7月から、100枚からの小ロットで受注製作を始めた。 　ほどなく、興味を持つアーティストやレーベルが現れ、今までに200作品近くを手がけるように。さらに代表の木田亮介さんは、七夕の7月7日を「短冊CDの日」と銘打ち、昨年から国内のレーベルと協力してCDショップでの販売イベントを開催している。「レコードのように、人気を再燃させたいなと思っています」と期待を寄せる。 　7月には、短冊CD約600曲のレビューが掲載されたガイド本「短冊CDディスクガイド　8cmCDマニアックス」が出版された。ガイド本を監修したディスク百合おんさんは、8センチCD専門DJとして活動している。「とにかく自由で雑多なところが魅力。若い世代も巻き込んで、カルチャーとして楽しめれば」と話している。（細川卓、小林一茂）