田辺誠一「MEN’S NON-NO」時代を振り返る「当時、モデルから役者という道は、限りなくゼロに近かった」
短編でも自主制作でもいいから、撮りたいものを探したい
――俳優として、30年以上のキャリアを持つ田辺さんですが、50代半ばを迎えて、仕事に対する心境の変化などはありましたか。 「今になって、役者として欲が出てきました。年齢的なこともありますが、自分の中でできないことも見えるようになり、逆に“これから先、もうちょっと新しいこともできるんじゃない?“と、思うようになりました。今までは、あまり野心みたいのがなかったんですよね。でも最近は、悔しがったり、嫉妬したり、あの役をやりたいとか、そういうガツガツさやアグレッシブさがあってもいいのかなと思うようになりました」 ――過去に映画監督としてメガホンも取っていますが、今後、監督業の予定は? 「ずっとやりたいという気持ちはあるんですよね。最後に映画を撮ったのが32、3歳で、もう20年経っています。僕の中では、どこか伊丹十三さんのイメージがあって、伊丹さんは、俳優をやって、『MEN’S CLUB』のモデルもやって、食を愛する文化人で、30歳の頃に自主映画を撮っているんですよね。そこからしばらく撮らずに、50歳の時、映画『お葬式』を撮って大ヒットしました。伊丹さんを見習って、“50歳からスタートしていいんだ! じゃあ何を撮ろう?”と考えましたが、結局54歳になってしまって(笑)。でも焦らずに、短編でも自主制作でもいいから、撮りたいものを探したいと思っています。 実は去年、戦う道具として、4K/60pで撮れるカメラと、編集できるパソコンを買ったんですよ。あとは脚本を書けよって話なんですけど(笑)。 今はこういう技術があり、ここまで映像で表現できるというのを踏まえた上で脚本を書き、いずれは映画を撮りたいという思いは、沸々とあります」
【田辺誠一 プロフィール】 1969年4月3日生まれ。東京都出身。1987年、雑誌「MEN’S NON-NO」で専属モデルとしてデビューし、1992年に俳優としても始動。シリアスからコミカルまで幅広い役柄を演じ、数々の映画やドラマに出演。 「ハッシュ!」(02/橋口亮輔監督)にて報知映画賞主演男優賞を受賞するなど、数々の賞を受賞。映像はもちろん、蜷川幸雄、宮藤宮九郎演出作品や劇団☆新感線など、舞台出演も多い。 アーティストとしても多彩な活動を続けており“画伯”と称される独特のイラストも人気。映画監督としては、第49回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式招待作品となった「DOG-FOOD」(99)、「ライフ イズ ジャーニー」(03)などを手掛けている。ドラマ25「ハコビヤ」(テレ東)で主演。 (取材・文/佐藤ろまん)
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