全米女子オープン2勝目の大快挙!! 笹生優花のドライバースウィングをAIで分析
軸を右足側に残してアッパーブローのインパクト(効率)
続いてトップ~インパクトを比較してみましょう。ココで注目したいのは、「胸と骨盤の左右の動きです。データ項目「CHESTSWAY」は胸、「PELVIS SWAY」は骨盤がそれぞれアドレスの位置から左右にどれだけ移動したか? を表すデータですが、トップで胸は-5.8cm(右)、骨盤は-1.9cm(右)で、骨盤がアドレスからあまり動かないのに対して、胸は右足の上に移動しているのが分かります。 そしてインパクトで胸は-10.9cm(右)と、より右足側に胸は残り、骨盤もインパクトで+3.3cm(左)と左に移動する距離はLPGAツアーレンジ(+5.8cm~+15cm(左))と比較すると少なめで、トップから切り返しにかけて一旦左に踏み込んでからはその場で回転しているのが分かります。この一旦左に踏み込んでから右足側に軸が残る動きは「Zトレース」と呼ばれ、特にドライバーをアッパーブローにインパクトして飛距離を出すのに有効と言われています。このアッパーブローで効率の良いインパクトが、笹生選手の飛距離の秘訣です。
ヘッドスピードを加速させる骨盤の上下の動き(速度)
最後に3つ目の特徴である「骨盤の上下の動き」を見てみましょう。データ項目「PELVIS LIFT」は、骨盤がアドレスの位置から上下にどれだけ移動したか?を表しますが、トップで骨盤は-6.6cm(下)にアドレスより下がっており、切り返しでは左に踏み込む際に骨盤はさらに下がって最大-11.1cmまで骨盤が低くなります。
このトップ~切り返しにかけて左に踏み込んで低く下がった骨盤は、インパクトではアドレスより+0.5cmまで上昇しています。この一旦低く下がった骨盤がインパクトにかけて上昇しているデータが地面反力を受けている証拠です。 この一連の動きをデータで追っていくと、トップ-6.6cm→切り返し-11.1cm→インパクト+0.5cmとなり、切り返しからインパクトにかけての骨盤が上にどれだけ伸展したか? を表す「PELVIS LIFT(INTO IMPACT)」は、11.1cm+0.5cm=11.6cmとなります。この上下の動きのデータは切り返しにかけての骨盤が下がる距離、インパクトにかけての骨盤が上がる距離、どちらも非常に大きく、笹生選手は「バーチカル」と呼ばれる縦方向の力が大きいことを表しています。上下のバーチカルの力はうまく使えるとヘッドスピードを加速させることができます。方向性、効率、速度、笹生選手のそれぞれの秘訣がこの3つの特徴によく表れていますね。 今回は、笹生優花選手のドライバースウィングを分析させて頂きました。日本人初となるメジャー2勝目を挙げた笹生選手や2位に入った渋野選手など、今大会は日本人選手の活躍が光りました。笹生選手に続く日本人選手のメジャー優勝も、きっとそう遠くない日に実現すると期待したいですね!
北野達郎