《憲法改正論議》衆院選公約にみる各党スタンスと9条以外の論点は?
22日投開票の衆院選では、憲法改正をめぐる是非も争点の一つになっています。安倍首相は今年5月、憲法改正について「憲法9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明記する」などとする案を提示し、2020年の施行を目指すと発言しました。今回の衆院選では、この9条をめぐって各党のスタンスの違いがあります。それぞれの党が掲げる9条以外の論点も含め、衆院選公約から各党の憲法改正へのスタンスをみてみます。
【自民党】 自民党は衆院選公約で、憲法改正を初めて重点項目に打ち出しました。9条に自衛隊を明記することを掲げました。安倍首相(自民党総裁)は憲法学者らの間で自衛隊違憲論があることを引き合いに出し、自衛隊員らの士気のためにもこうした論争に決着をつけたいとしています。その他の論点としては「緊急事態対応」「参議院の合区解消」「教育の無償化・充実強化」を目指すとしています。 【公明党】 自民党と連立を組む公明党は、9条への自衛隊明記については慎重といえます。公約では「多くの国民は現在の自衛隊の活動を支持しており、憲法違反の存在とは考えていません」としています。一方で、新たな条文を加える「加憲」によって時代の変化に対応するとし、その論点として、(1)地球環境保護などの環境保護、(2)地方自治強化へ自治体の課税自主権の拡大など、(3)緊急事態に国会議員任期の特例を設けるべきかなど、を挙げています 【希望の党】 希望の党は、公約に「9条を含めた憲法改正論議を進める」として、自衛隊の存在を含めて時代にあった憲法のあり方を議論するとしています。ただ小池代表は党首討論で、自衛隊明記については「疑問がある」と述べ、防衛省と自衛隊の関係が逆転するとの懸念も指摘しています。その他の論点としては、国民の知る権利を定めて国や自治体の情報公開を進めることや、地方分権を明記して課税自主権、財政自主権を規定するなどの案を示しています。 【日本維新の会】 希望の党と選挙協力する日本維新の会は、「70年前に施行されて以来一言一句の改正も行われていない現行憲法を、時代の変化に合わせ、わが国が抱える具体的問題を解決するために改正する」と憲法改正を掲げています。論点として、同党は「教育無償化」「統治機構改革」「憲法裁判所の設置」に絞った憲法改正原案を取りまとめたとしています。 【立憲民主党】 民進党の分裂で生まれた立憲民主党は、2015年に成立した安保法制を違憲だとし、「専守防衛を逸脱し、立憲主義を破壊する安保法制を前提とした憲法9条の改正には反対」との立場を打ち出し、領域警備法の制定と憲法の枠内での周辺事態法を強化すると記しています。枝野代表は、喫緊で憲法改正が必要なテーマはないが、強いて挙げるなら、首相の解散権の制約があると語っています。 【共産党】 共産党は、9条への自衛隊明記に明確に反対し、前文を含む憲法の全条項を守るとしています。憲法に自衛隊を明記すると、「後からつくった法律は、前の法律に優先する」と法の一般原則によって、戦力不保持や交戦権の否認を記した9条2項が残ったとしても死文化することは避けられず、無制限の海外での武力行使が可能になるなどと訴えています。 【社民党】 社民党も憲法の「平和主義」「国民主権」「基本的人権の尊重」の三原則を守り、「憲法を変えさせない」と記しています。「憲法を活かす政治」を掲げ、13条の幸福追求権や25条の生存権などを重視していくとしています。 【日本のこころ】 日本のこころは「日本人の手による自主憲法の制定を目指す」としています。9条関連では「自衛のための戦力の保持」を掲げ、その他の論点としては、憲法上の天皇の位置付けの検討、国家緊急権に関する規定整備、憲法改正の発議要件緩和、などを挙げています。