久保&三笘&守田がもたらす異次元フェーズ 欧州で格上撃破…日本代表の追い風に【コラム】
日本人所属クラブが欧州強豪を次々撃破、日本代表にもたらすポジティブな影響
イングランド1部マンチェスター・シティが公式戦4連敗。ジョゼップ・グアルディオラ監督が就任してからは初だそうだ。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)リーグフェーズ第4節でスポルティング(ポルトガル)に1-4、プレミアリーグ第11節ではブライトンに1-2の連敗。絶好調だったFCバルセロナ(スペイン)もラ・リーガ第13節でレアル・ソシエダに敗れた(0-1)。 【写真】「美人すぎん?」「誰?」 日本代表FWの隣に“謎の美女”と話題の1枚 この3試合に日本人選手が関与している。スポルティングには守田英正、ブライトンに三笘薫。そしてソシエダの久保建英はバルセロナを破った試合のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選出された。 スポルティングは5バックで深く引いて守り、そこからのカウンターで得点を重ねた。前半はシティに先制されている。5バックの前に5人が五角形を作るようなゾーンで構えていたが、その五角形のブロック内にどんどん侵入されてしまっていた。ただ、シティはあまりに押し込みすぎてしまい、最終ラインの3人がハーフウェイラインを越えてスポルティング陣内まで来てしまっていたので、カウンターを受けた時に3バックの背後がオフサイドゾーンになっておらず、そこを突かれて何度か危ない場面があった。 前半38分には守田のパスを起点にヴィクトル・ギェケレシュが抜け出して同点に。後半、スポルティングは守り方を修正。シティの配置に合わせてMFを菱形に変えてマークのずれを防ぎ、カウンターから3ゴール。終わってみれば4-1の完勝だった。 ブライトンはシティの3バックに2トップ+三笘を当ててプレス。やはり先制は許したが5-2-3の守備ブロックで追加点を許さず。後半にはシティの浅いラインの裏を突いて逆転に成功。三笘は左のシャドーとウイングを兼任するような形でチャンスを作っていた。 ソシエダはバルセロナのオフサイドトラップを警戒してサイドチェンジを多用。縦パスはウイングをターゲットマンにする形で、やはりオフサイドを回避した。久保は右ウイングとしてボールをキープする役割のほか、そこからの突破やカットインで圧倒的な技量を示した一方、守備も精力的に二度追い、三度追いを行う献身ぶり。文句なしのMOMだった。 アジア予選で日本代表が劣勢になることはほぼないが、ワールドカップ(W杯)本大会となれば格上との対戦は避けられないだろう。しかし、シティやバルセロナほど戦術的な完成度の高い相手もいないと思われる。この2チームに勝利した守田、三笘、久保の経験はかなり大きいのではないか。 守田は相手にボールを握られながら中盤の構成を変えて流れを変える経験を得た。三笘のシャドーは日本代表でもすでにやっているが、カイル・ウォーカーを翻弄して自信を深めただろう。久保もハイライン守備戦術の攻略を実感したはず。 相手がスペインでもブラジルでも、ポイントを外さなければ十分勝てる。勝てるかもしれない、勝てるはずだ、ではなくて実際に勝利していることが大きい。格上の強豪に勝利した経験者が3人いるだけでも、従来の日本代表とは異なる段階にきているのではないか。 [著者プロフィール] 西部謙司(にしべ・けんじ)/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。95年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、「サッカー日本代表戦術アナライズ」(カンゼン)、「戦術リストランテ」(ソル・メディア)など著書多数。
西部謙司 / Kenji Nishibe