甲子園スター→TJ手術→大学中退→独立L…27歳が掴んだ西武の“新4番” 抜擢された背景
ひょうたんから駒? 「みんなが予想していないところで1発で仕留める」
平石洋介ヘッド兼打撃戦略コーチは「なんとか打線が上位で途切れず、つながるようにしたいという思いで、バントもエンドランもできる岸を4番に置くことにしました。もちろん、打撃の調子がそこそこ良かったことも、理由の1つです。4番は本来、アギラーやサンペイ(中村)のような選手なのでしょうが、岸のようなタイプが4番に入ってもいいのではないかと考えました。本人には『何も変える必要はない。今までのスタイルのままでやってほしい』と伝えています」と説明する。 “ひょうたんから駒”ではないが、4番に座った岸は予想以上の勝負強さを見せている。22日のオリックス戦(京セラドーム大阪)でも、3回に5号3ランを放ち勝利を引き寄せた。 渡辺監督代行は「皆さん(報道陣)も感じていると思うけれど、岸は何かこう、1発で仕留める時がある。みんながあまり予想していなかったところで、1発で仕留める。彼が持っている運なのか……」と感嘆。「甲子園のスターだから? 甲子園のスターって、そういうものを持っているんだよね、たぶん」と続けた。 岸は高知・明徳義塾高時代に、4度甲子園出場。当時は「4番・投手」を務めることも多かった。ところが拓大進学後は相次ぐ故障に見舞われ、右肘のトミー・ジョン手術を受けるも経過が思わしくなく、大学を中退するに至った。いったんは現役引退を心に決めたが、四国アイランドリーグplusの徳島に入団し野手に専念。俊足堅守の外野手に生まれ変わり、2019年ドラフト8位で西武入りを果たした苦労人だ。 岸は「“4番”という響きには、懐かしさを感じます」と遠い目をしながら、「調子に乗らず、練習通りセンター中心に打っていきたいと思います。打順は何番だろうが、やることは変わらないと思います」と自分に言い聞かせるように話す。 今季既に1番から9番まで、全ての打順を経験している岸だが、今のところ4番に座っている時が最も生き生きとして見える。ひょっとすると、かつての甲子園のスターは紆余曲折を経て、自分が一番輝ける居場所を見つけたのかもしれない。
宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki