神尾楓珠、『最寄りのユートピア』で見せる“声の表現力” 多彩さをキャリアと共に振り返る
『3年A組』『HiGH&LOW』『いちばんすきな花』にみる神尾楓珠の“適応力”
本作で神尾はギターの弾き語りに挑んでいるのだという。さらには彼が、メインテーマである「背中合わせ」も歌い上げるらしい。神尾がミュージシャン役を演じて歌唱するのは、これがはじめてのことである。 筆者は冒頭で神尾について、エンターテインメントシーンの“いま”を背負う中心的存在だと記した。彼のキャリアをざっくり振り返ってみると、デビューからたったの4年で若手俳優の注目株になっていることが分かる。生徒のひとりに扮した『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(2019年/日本テレビ系)は、出演者の誰もがいまではドラマや映画の主要な役どころを担うまでになっているのがその証。こちらは大人と若者たちの心理戦を描いたものだが、『HiGH&LOW THE WORST』(2019年)ではアクションに挑戦し、神尾は硬軟自在な演技であらゆるジャンルの作品に適応してみせてきた。 月9ドラマ『真夏のシンデレラ』(2023年/フジテレビ系)も若手世代の俳優たちが名を連ねた作品だが、これに続いて放送された『いちばんすきな花』(2023年/フジテレビ系)では、一回り世代が上の松下洸平らととも主演を務め、その力が光るのは若手たちの中だけではないことを証明していたように思う。 そんな彼の出演最新作である『最寄りのユートピア』で注目なのが、声の表現と適応力だ。セリフではなく歌で、私たちに何を訴えかけてくるのか。そして、本人役として出演するプロのミュージシャンであるflumpoolの山村隆太とともに、どのようなセッションを繰り広げるのか。先述しているように、本作で神尾が対峙するハードルが高いのは間違いない。しかし彼がこれを越えたとき、私たちの誰もが足を止め、その声に聴き入り、その姿に見入ることとなるに違いない。
折田侑駿