映画『まる』荻上直子監督が吉岡里帆のコメントを絶賛「タイトルとは裏腹に、まるく収まってない」
『かもめ食堂』『めがね』にはじまり、昨年世に放った『波紋』と、人気と評価を得続けている荻上直子監督。堂本剛へのあて書きからスタートした最新作『まる』でキャストのひとりに名を連ねる吉岡里帆とは、脚本を担当した2017年放送のドラマ作品で出会っていた。今度は監督とキャストとして、久しぶりに再会し、タッグを組んだ。そんなふたりが語る「THE CHANGE」とはーー。【第3回/全5回】 ■【画像】豪華キャストが集結!映画「まる」公式Xに投稿されたメイキングストーリー デビュー以前より、荻上監督の作品が好きだったという吉岡さん。どういったところに惹かれていったのだろう。 吉岡里帆(以下、吉岡)「荻上監督の作品は、説明がほとんどないところが好きなんです。自分がどういう立場から見るかで、映画の色がぐっと変わっていく。いま説明の多い分かりやすいものが受け入れられる雰囲気があって、そうした作品も多いですけれど、荻上監督の作品は、それとは違うからこそ、“自分だけのもの”だと思えるんです」 ――分かりやすさとは違うからこそ、“自分だけのもの”に。 吉岡「観る人の主観が入って完成する、というか。そこに惹かれます。それからみんな、不器用だけれど一生懸命生きてるんですよね。“生きてるな!”という感じがすごくする。だから救われるんだと思います。ひとりじゃないと思わせてくださる」 荻上監督(以下、荻上)「ありがとうございます(照)。よく、作品に込めた思いを聞かれることがあって、困るんですけど、今回の『まる』でひとつあるとすれば、いまって生産性とか、効率が大事だと言われていますが、役に立たないヤツでもいいんじゃないか、と。私、“大人になったら人の役にたつ人間になりたいです”とかって、子どもたちが言っているのを聞いたりすると、すごく“ぞわっ”とするんです」 ――(笑)。
“役に立たない人がいたっていいんだよ”
荻上監督「そもそも映画ってあってもなくても、もしかしたら生活には支障ないものだったりする。そういう役には立たないかもしれない仕事をしてるんだけど、だからって、なくてもいいのかというと、それはちょっと違う気がしているんです。あっていいし、必要だと思ってくれる人も、もしかしたらいるかもしれない。それは役に立たないということとは、また違うところにある。だから、“役に立たない人がいたっていいんだよ”というのは、今回、入れたかったんです。吉岡さんが『まる』について“タイトルとは裏腹に、まるく収まってない”とコメントしてくださっているのを目にしたんですが、すごいいいコメントだなと。さすがだと思いました」 吉岡「本当にそう感じたんです。今回、監督とお会いして、“わ~!”って燃え動いて蠢いている感情が伝わってきました。スタッフやキャストのみなさんと過ごすときは穏やかですけれど、作品を残す人として、大きなエネルギーを持っている。そのことがビリビリ伝わってきましたし、そのパワーを作品に込めてらっしゃると思いました。それに、そうした作品を残すためのエネルギーって、私の中にもあるなと感じました」 ――表現者としてのエネルギーでしょうか。 吉岡「当たり前とか、みんなに求められるようにとか、こうあるべき、といったところを全部取っ払っていかないと、次の場所にいけない感じ。そうした焦燥感のようなものを、日々感じているんです。『まる』は、こうあるべきみたいな殻をバーン!と破って、収まっていない感じがしました。みんなが自由で、愛おしくなりました」 吉岡さんは、自身のInstagramに「まるく収まろう、まるく関わり合おう、まるく落ち着こう、そういった事とは正反対の”まる”からの脱却、逸脱、と良い意味の裏切りを秘めた作品」と発信。監督の持つその精神が、吉岡さん自身と響き合った。 荻上直子(おぎがみ・なおこ) 1972年2月15日生まれ、千葉県出身。94年に渡米し、南カリフォルニア大学大学院映画学科で映画制作を学ぶ。2000年に帰国。04年に『バーバー吉野』で劇場映画監督デビューし、第54回ベルリン国際映画祭・児童映画部門特別賞を受賞した。06年の『かもめ食堂』が大ヒット。その他の主な監督作に映画『めがね』『僕らが本気で編むときは、』『波紋』など。最新作は堂本剛を主演に迎えた『まる』。 吉岡里帆(よしおか・りほ) 1993年1月15日生まれ、京都府出身。2016年、NHK連続テレビ小説『あさが来た』の第108話から登場。丸メガネの「のぶちゃん」として一躍注目を集め、翌年放送の『カルテット』(TBS)で一気に知名度と評価を得るとともに、人気を獲得していった。近年の主な出演作に、ドラマ『時効警察はじめました』『しずかちゃんとパパ』『時をかけるな、恋人たち』、映画『ハケンアニメ!』『アイスクリームフィーバー』『ゆとりですがなにか インターナショナル』『怪物の木こり』など。最新公開作に『まる』。待機作に『正体』。2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』への出演も発表されている。 望月ふみ
望月ふみ