「今からシリアの戦地に行ってきます」天才棋士・羽生善治が仰天する、向こう見ずな「Z世代」の衝撃的な行動
想像を絶する速度で進化を続けるAI。その存在は既存の価値観を破壊し、あらゆる分野に革命をもたらしている。人知を超えるその能力を前に、人類はどう立ち向かうべきなのか。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 それぞれの分野の最先端を歩む“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が人間とAIの本質を探る『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋して、新時代の道標となる知見をお届けする。 『人間の未来AIの未来』連載第25回 『「なぜ日本の研究は遅れているのか」…ノーベル賞科学者・山中伸弥が教育現場にみる、日本とアメリカの絶望的なほどの「差」』より続く
「新しい環境」に身を置くこと
山中 前回記事で言われたことは将棋で対局するときにも当てはまることなんでしょうね。 羽生 そうですね。将棋には「これはこうだ」とはっきり答えがわかっている局面と、答えがない局面の両方があります。自分が持っている羅針盤が機能しない未知の局面に出くわしたとき、どれだけ素早くその局面に対応できるかで真価が問われます。 私は普段の生活でも同じサイクルや思考法に陥らないようにしています。身近な例で言えば、将棋会館に行くにも、羽田空港に行くにもルートを変えるとか、新しい場所に身を置くようにしています。 ただ、この話で気をつけなければいけないのは、「これまでの知識や体験が役立たない状況」と聞いた若い人たちが、勢いのあまり「じゃあ今からシリアの戦地に行ってきます」とか「災害地域に出かけます」といった短絡的な考えに結び付けると、困ってしまいます。
リスクを取る上での「大前提」
羽生 だから、気をつけて話さないといけないんですよ。知識や経験が役に立たない状況はリスクを伴うので、さまざまな意味での身の安全を自分自身の判断で確保することは大前提です。 山中 「向こう見ず」はダメで、向こうもこちらもちゃんと見る。 羽生 情報化の現代では、大量のデータがどんどん入って来るので、量を使いこなすことによって力をつけている感じがします。私が関心を持っているのは、膨大に有する情報の「量」を、ただ丸暗記するのではなく、自分なりに栄養素として吸収し、未知の局面に遭遇したときに自然に対応できるような「質」に転換できるかどうかです。これから先の若い人たちの大きなテーマなんじゃないかと思っています。