売上高180億円の「ジュエルカフェ」 始まりは結婚相談所 沖縄出身創業者の経営眼(上)
国内外に約300店を展開する貴金属買い取り専門店「ジュエルカフェ」。創業したのは沖縄出身の新垣純さん(45)だ。運営会社のクレイン(東京)を2005年に27歳で設立。結婚相談事業を成功させ、07年からジュエルカフェを始めた。全国展開の鍵を握ったのは地元、沖縄だった。宝石販売や美容院などにも事業を広げ、グループ全体の売上高は180億円まで伸びた。起業家の歩みから、経営のヒントを探る。(東京報道部・照屋剛志) 【写真】ジュエルカフェなど国内300店舗を経営するクレインの新垣純代表
入社1年目から新業種を開拓
「ようこそ!」。東京・南青山にあるクレインを訪れると、新垣さんが張りのある声で出迎えた。20代で会社を立ち上げ、国内外に300店舗を広げた創業者。勝手に熱血漢をイメージしていたが、快活で笑顔を絶やさず、質問には丁寧に応える。その柔らかく紳士的な態度が、顧客や社員を引き付けていくのだろうと想像する。 新垣さんは起業を志し、那覇西高校から沖縄県外の大学に進学。同志社大学大学院ベンチャービジネスコースで修士号を取得し、コンサルタント業の船井総研(大阪市)に2003年に入社した。「起業の強みになるから」と、船井総研では早期の実績づくりにこだわった。同社のコンサルタントは、ホテルや中古車販売など業種ごとにチームが分かれていた。新入社員はいずれかのチームに所属し、経験を積んでいく。ところが、活躍を急ぐ新垣さんは、新たな業種を探し出し、独自でチームを立ち上げた。目を付けたのは、当時増え始めていた結婚相談所。
50カ所回って得た顧客目線
だが、結婚を考えたこともない25歳の新社会人にとって、結婚相談所は未知の世界。具体策が浮かばない中、「とりあえず客として相談所を回りまくった」。そして、50カ所以上回ったところで、業界が見えてきたという。さっそくレポートをまとめ、セミナーを開いた。 結婚相談所は数十万円の入会金が必要になる。高額な前払いが必要なのに、契約する事務所の雰囲気が粗雑だと客の心理は冷めてしまう。「ボールペンや卓上カレンダーが、他の企業のロゴが入ったもらい物や、100円均一の商品だったら、お客さまはどう思うでしょう?」 セミナーに参加している結婚相談所のプロの職員が、新垣さんの説明に必死でメモを取った。 新垣さんはブランディング構築やサイト運営などに必要なテクニックを細かく具体的に提示していった。「事業者をとことん回ることで、事業者側で見えてない部分があることが分かり、顧客目線の大切さが身に付いた」。開催するセミナーは盛況で、コンサルの依頼も受けるようになった。結婚相談所の新規立ち上げにも関わり、退職までに20カ所を設立した。新垣さんは「コンセプト設定、物件探し、人材採用と育成などの起業に必要な経験を全てできた」と振り返る。