ひとりで悩まず受診を~骨盤臓器脱~
◇早めに婦人科か女性泌尿科を受診
―どんな症状が表れますか。 自覚症状は、下がってきた臓器に圧迫されて尿道が曲がってしまい、尿が出にくい、逆に頻尿や尿失禁がある、便秘、股の間に何かはさまったような違和感がある、などです。重症化して腟の外に臓器が出てくるようになると、動くたびにこすれてただれてしまい、下着に血が付く、おりものが増えて、においが気になるなどの問題も出てきます。脱出した臓器に引っ張られて下腹部痛が生じることもあります。朝起きたばかりのときは症状が軽く、起きて活動するうちに、だんだん骨盤内の臓器が下がってきて、夕方には症状がひどくなるというパターンが多く見られます。 これらの症状のために、外出をしにくくなって活動が消極的になり、生活の質が低下してしまう人も少なくありません。さらに、尿道が強く圧迫されて尿が完全に出なくなると、腎不全を起こし、命に関わる場合もあります。 ―何科に行けばいいですか。 この病気はギリシャの医学書にも出てくるほど、古くからよく見られる病気なのですが、人にはなかなか言いづらいせいか、困っていながらも、脱出した臓器を自分の手で押し込めるなどして、対処していた時代が長く続きました。 気になる症状があれば、早めに婦人科か女性泌尿器科を受診しましょう。診察では、問診と視診、内診をすれば、すぐに骨盤臓器脱と分かります。 かつては、子宮が落ちてくるケースを性器脱と呼んで、婦人科だけの問題とされていましたが、ぼうこうや直腸も落ちてくるため、骨盤臓器脱という名称に変わり、泌尿器科でも治療を行うようになりました。 受診をためらう女性がいまだに多く、「10年前から悩んでいた」という女性が後を絶ちません。きちんと治療すれば快適に過ごせる治療法の選択肢が増えています。人生100年と言われ、長くなった人生後半を元気に楽しく過ごせるよう、もっと身近な存在として、気軽に相談に来てほしいと思います。(ジャーナリスト・中山あゆみ) 明樂重夫(あきら・しげお) 1983年日本医科大学卒業、87年同大学大学院修了。東部地域病院婦人科医長、日本医科大学付属病院産婦人科病棟医長を経て、2011年より日本医科大学産婦人科教授。22年4月より現職。