歩数にこだわっても、平地をただ歩いているだけではコレステロール値に与える影響は少ない。注目したい自転車の運動強度
運動方法を改善した結果は!
さて、推奨される運動強度を8週間続けた効果はあらわれたのでしょうか。 指導前と指導8週後の血液検査の数値で5%以上の有意な差が現れたのは、動脈硬化の原因となるLDLコレステロール値でした。指導前の平均139(mg/dL)という値が、124(mg/dL)まで低下しました。140(mg/dL)以上が脂質異常症と診断されるので、基準値ぎりぎりだった値が15(mg/dL)も下がったのです。 この調査は、8週後の血液検査でいったん終了しましたが、指導24週後に再び血液検査をさせていただきました。その間、指導どおりの運動を続けてくださいとはお願いしませんでしたが、みなさん、指導を反映したウォーキングを続けたそうです。 24週後の血液検査の結果、LDLコレステロールは低い値が維持され、さらに中性脂肪の値は、指導前の平均115(mg/dL)から90(mg/dL)へと25(mg/dL)も低下しました(図3-11)。 この調査結果をまとめると、指導前の散歩程度の運動強度でも有酸素運動の習慣を持つことによって糖や脂質の消費量が増加し、血糖値や中性脂肪値というエネルギーの余り具合を示す数値は基準値以下を達成している人が大半でした。 動脈硬化に悪影響を及ぼす内臓脂肪の蓄積を防止する一定の効果があると考えられます。しかし、散歩程度の運動強度では、LDLコレステロールの数値は改善せず、動脈硬化を抑制する効果は不十分です。やはり、50%以上の運動強度の有酸素運動を行うことで、LDLコレステロール値の改善効果が多くの人に現れ、動脈硬化を抑制する効果が期待できます。 図/書籍より 写真/shutterstock ---------- 髙石鉄雄(たかいし てつお) 1960年生まれ。名古屋市立大学副学長・高等教育院長、同大学院理学研究科教授。1986年、神戸大学教育学部卒業。神戸大学大学院教育学研究科修了。1989年、名古屋市立大学教養部助手などを経て、2000年、名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科助教授。2012年より教授。2017年より現職。論文『自転車運動に対する身体適応および日常的自転車使用による健康づくりの可能性』にて博士号(人間・環境学/・京都大学)。専門は、応用生理学、バイオメカニクス、健康科学 ----------